公正証書遺言のメリット・デメリットについて

「公正証書遺言」には、メリットとデメリットがあります。
「公正証書遺言」のメリットの一つとして、「遺言書」が公正役場に保管をされているため、紛失防止や偽造防止になることがあります。

さらに、相続の手続きの時に検認が不要になることがメリットになります。
一方で「公正証書遺言」のデメリットとして、手続きに作成時間と作成費用がかかること、公証人や証人に遺言内容を説明しなくてはならない事などから、遺言の内容がしられてしまう事などが挙げられます。

それでは、「公正証書遺言」のメリットとデメリットを、それぞれ確認していきましょう。

目次

公正証書遺言のメリット

「遺言」が無効にならない

「遺言内容」には、書き方について一定の決まり事があり、「無効」にならないためにも、必要な要件がいくつか設定されています。 つまり、法的に無効になってしまうと、何のために「遺言証書」を作成したのか全く意味をなさなくなります。

【自筆証書遺言書の最高裁判例(昭和54年5月31日)】

日付の有効性が争われた裁判になります。
「七月吉日」と書かれたため、「自筆証書遺言書」は無効と判断されてしまいました。
理由は、日付の記載を欠くとされるため、「吉日」では、無効となりました。
有効にするならば、数字の日の記入手間を惜しまなければならなかった訳ですです。
「公正証書遺言」は、法律の知識を持つ「公証人」が書く証書になります。
そのため、無効になるという事は、無いと言ってもよいでしょう。
また、「自筆証書遺言」は、遺言者が1人で作成するために、作成時の状況や判断力などに疑問が生じる事があります。遺言書の無効訴訟に、繋がらないとも限りません。
例えば、知り合いに誘導されて作成された「遺言書」や、認知症のため十分な判断能力がないまま作成された「遺言書」などが考えられるでしょう。
一方、「公正証書遺言」については、①遺言者②公証人③証人の三者が関わることになるため、①遺言者が認知症だったために、誰かに誘導された等による、「遺言書の無効訴訟」になるのを防ぐことに繋がります。

遺言証書を紛失しない

「遺言書」を保管した場所を忘れてしまったら、相続人等が家の中を探し回らなければならず、どこで紛失したのかが解らなくなります。
「公正証書遺言」は、公証役場へ保管されるため、紛失してしまうリスクがなくなり、そういうことになる事態を防ぐことになります。

偽造防止ができる

「遺言書」は誰かに偽造されてしまうおそれがありますが、その点においても、「公正証書遺言」は公証役場に保管されてるため、心配はなくなります。

自筆する必要がない

「遺言書」に自筆する必要がないのは、極めて楽なことでしょう。
「公正証書遺書」は、公証人が作成してくれるため、法的書式に則った「遺言書」ということになります。
したがって、病気等の理由により、文章が自筆で書けない人にとっては、公証人が代筆してくれるため、心配無用です。

一方、「自筆」の場合は、文章の一部分でも他人の記入が入ったら、筆跡鑑定等により、本人かどうか判定されるため、結果的に「無効」というおそれが生じてしまうため、それを防ぐためにも公証人が作成する「遺言書」の作成役割と責任は、とても信頼されるものになります。

遺産相続の相談開始が迅速にできる

「公正証書遺言」があれば、相続が発生したときでも、家庭裁判所が相続人に説明することとなるため、検認が不要という事になります。
したがって、相続人は、迅速に遺産相続の相談開始ができることになります。
すみやかに相続手続きが開始されることは、相続人にとってメリットになります。

手数料手数料
100万円まで5,000円
200万円まで7,000円
500万円まで11,000円
1,000万円まで17,000円
3,000万円まで23,000円
5,000万円まで29,000円
1億円まで43,000円
3億円まで5,000万円ごとに13,000円加算
10億円まで5,000万円ごとに11,000円加算
10億円超5,000万円ごとに8,000円加算

公正証書遺言デメリット

時間がかかる手続きになる

「証人」を探さなくてはならないため、遺言書の手続きに多少時間がかかります。
「公正証書遺書」を正しいものに成立させるためには、「公証人」と「証人」の2人以上の立ち会いが必要になります。
公証人は、通常、公証役場にいるため探す必要はありませんが、「証人」については、2人以上必要になるため、どうやって探すかどうかが問題になります。
手間ひまが多くかかる事になりますが、面倒くさがらずに、避けて通ることができないでしょう。
「公正証書遺言」は、結果的に法的有効になる書類となるため、手間ひまをかけて、作成していかなければならないという事を心得ておいた方がよいでしょう。

費用がかかる手続きになる

公証人の立場は公務員になります。
しかし、だからといって、無料で仕事をしてくれるわけではありません。
「公正証書遺言」の作成には、受遺者の1人に対して譲受ける財産価額に応じて、「公証人」に手数料を支払う必要があります。
手数料の金額としては、それほど高くないと感じられるかもしれませんが、無料で遺言書の書類作成はやってくれないということです。
「公証人」は、法務大臣から任命された公務員になります。
いわゆる月給者ではなく、手数料収入を収受する形で成り立つ職業となります。
公証役場においても、収入源がなかったら運営できないという事情が、あるわけです。
なお、相続の手続きで必要になる正本や謄本を交付する場合のお手数料は、1枚につき250円かかります。
また「遺言者」が病気等により、公証役場へ直接行くことができない場合には、代理人として、公証人の日当が追加で交通費が発生することとなります。

公証人や証人に遺言内容を知られてしまう

1つ目のデメリットで説明したとおり「公正証書遺言」は、「公証人」と「証人」の2人以上が必要になります。
「公正証書遺言」の証書作成段階に立ち会う「公証人」と「証人」は、遺言内容の確認をしなければ、公正証書の作成ができません。
また、推定相続人(将来相続人になる予定の人)は、「証人」になれないため、第三者に「証人」を依頼する必要があります。

一般的には、遺言者の友人または司法書士、もしくは弁護士に依頼します。身近に「証人」の適任者がいなければ、公証役場でも「証人」の適任者を紹介してくれます。
遺言の内容を、どうしても知られたくないという思いが強いのであるならば、「公正証書遺言の法的有効性」をあきらめて別の方法による証書を選択するしかありません。
別の方法による証書として「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」があります。
しかし、いずれの方法にしても、他人が介在すると、遺言書執筆段階および後で知られてしまう危険性があります。

「自筆証書遺言」は法務局で保管ができますが、遺言の内容のチェックまではしてくれません。
証書の作成段階でチェックを入れるのならば、専門家として弁護士が遺言の内容を知ってしまいます。
一方、「秘密証書遺言」は文書を入れた封筒の上に、「公証人」と「証人」の署名・押印をするだけで良いため、遺言の内容のチェックまではされません。
しかし、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は、法的に有効かどうかまでは、チェックできないため、遺言の内容作成には、特に注意が必要になります。

公正証書遺言の作成手続きと流れ

公正証書遺言の作成手続きは、順序立てて進めていく必要があります。

公正証書遺言作成手続きの流れ

公正証書遺言の作成当日は、「公証人」が「遺言者本人」と「2人以上の証人」の本人確認を行ったあと、一緒に公証役場へ行きます。

公証人に、遺言の内容を口述したのちに、公証人が作成します。

遺言者が亡くなったら、最寄りの公証役場へ行きます。

遺言書の内容を確認し、相続の手続きを行うこととなります。

遺言書の作成・完了までは、相当の期間が必要となります。公正証書遺言のデメリットにもなりますが、弁護士など専門家を介在するととにより、作成期間の短縮はできます。 遺言書の作成・完了までは、約1ヶ月間を要すると考えられます。

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