遺言書の失敗例:ダメな遺言書、トラブルを避けるための対策

相続時の遺産分割ではトラブルになる場合があります。被相続人の死後、相続人同士が争わないためにも遺言書を作成しておきましょう。又、逆に遺言書があることで相続人同士がトラブルにならない様にするためにも、正しい方法で、自分の意思をしっかりと遺言書に記載することが大切です。

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トラブル回避のため自分の意思を記載する

遺言により被相続人の意思を明確にすることにより、財産をどのように相続させたいのか、誰に相続したいのか最終的な意思を伝える手段になるのが遺言です。法定相続よりも遺言による相続が優先されますので、相続を円滑に進めることができ、相続人同士の争いを回避することが可能になります。
子供がいない夫婦で配偶者に全財産を相続したい場合には、配偶者に全ての遺産を相続させる旨を遺言書に記しておくことが必要です。
内縁関係の夫婦だと法律上では婚姻している夫婦と同等の保護を受けられるようになっていますが、相続権は認められていませんので、遺言書の記載がなければ財産の全ては配偶者の血族に渡ってしまいます。
相続関係が複雑で再婚して子供がおり、前妻にも子供がいる場合など相続分や財産の分割方法を指定しておく必要があります。
遺言書は15歳以上であれば作成でき、古いことで無効となることもありません。事故や災害でいつ不幸が起こるのかわかりませんし、年齢を重ねるにつれて判断力も衰えてきますので、そうなる前に自分の意思を残しておくことが必要です。

自書証書遺言の失敗例

自書証書遺言書とは本人の自由に作成が可能ですが、一定の条件を満たしていないと無効になってしまいます。自書として認められない場合として筆跡が明らかでなくワープロでの作成や代筆されたものは無効になってしまいます。筆記用具にも規定はありせんが、第三者の改ざんのおそれがあるため鉛筆は避けましょう。日付、氏名、押印のいずれが一つ欠けていても無効とされてしまいます。日付は年号でも西暦でも問題ありませんが、記載がない場合は無効となってしまいます。押印については実印でも認印でも可能とされていますが、なるべく実印の方がよいでしょう。
遺言書に加筆、削除、訂正する方法は法律で定められており「遺言者がその場所を指示しこれを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更場所に印を押さなければ、その効力がない」(民法第968条)と規定していますので、当てはまらない訂正方法をした場合、その変更はなかったものになってしまいますので注意が必要です。

公正証書遺言の失敗例

公正証書遺言とは、公証役場で証人立ち合いのもとに法的に正しい書式で作成するものなので、自書証書遺言より無効になることは少ないですが、公正証書遺言であっても無効になる場合があります。
公正証書遺言には2人以上の証人立ち合いが必要とされていますが、未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、及び使用人これらの証人欠格者が、証人として立ち会った場合には公正証書遺言は無効となってしまいます。適切な証人2名以上が立ち会い、そのほかに証人欠格者が同席していた場合の遺言の効力については、原則として有効であるとされています。
その他には、遺言者および証人が筆記の正確性を承認した後、各自これに署名し、印を押すことも必要です。公証人が、その証書の方式に従って作成した者である旨を付記して、これに署名・押印することも必要ですので、不備が原因で無効にならないようにしましょう。

不動産でよくある失敗例

建物と土地はそれぞれ独立した不動産になっております。そのため「家」と遺言書に書いてしまった場合、それぞれが別々の権利が発生するため、トラブルのもとになってしまいます。土地の記載のみで、建物に関して記載されていない遺言書の場合、土地に関しては相続登記ができても建物については無効となり、遺産分割協議が別途必要になる事例もあります。
また、不動産は物件ごとに取得者を遺言書に記載する必要があります。特に複数の不動産がある場合は、物件(土地・建物)ごとに取得者を決めて、共有にすることは極力避けるべきです。もし共有にしてしまうと、売却や建替えのときに両者の意見が合わなくなってしまう場合も想定されるからです。また、相続した人の相続がさらに発生した場合、物件の所有者がさらに増えてしまうこともありますので、不動産は物件ごとに取得者を決めることが望ましいです。

遺言書の表現方法の失敗例

「〇〇へ託す」や「〇〇が管理せよ」とは法律的に、物の権利を明確に示しているとはみなされず、相続させたりするような意味を表す表現ではありません。「一任する」「任せる」「お願いする」という表現も、相続事務手続きを任せると解釈されてしまい相続人同士での争いの原因になってしまうことがあります。曖昧な表現ではなく相続人に対しては「相続させる」という表現方法を使います。長男の嫁や孫(長男が生きている場合)は相続人になりませんので、「遺贈する」という表現方法で記載しなくてはいけないため、相続人以外に財産を残してあげたいと考える場合には注意が必要です。                        
逆に相続ことを書かずに感謝の気持ちや自分の思いだけしか書かれていない遺言書だと意味がありません。遺言書は財産承継について書くものです。自分の思いや気持ちを書きたくなるのもわかりますが、このような遺言書であれば、家庭裁判所で検認手続きをしたとしても、相続全員で全ての遺産について、遺産分割協議をしなければならなくなります。

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