相続放棄すべき人とは?4パターンの解説と注意点

相続放棄とは、相続人が自己のために開始した相続の効果を否定し始めから相続人ではなかったことにする意思表示です。前提として相続は「プラスの財産」のみではなく「マイナスの財産」も遺産として相続人が引き継がなければいけません。
相続放棄は、被相続人から遺産を相続する際に財産が相対的にマイナスとなる場合に選択することで相続人を守る制度であります。ここでは相続放棄すべき4つのパターンと注意点について解説します。

目次

相続放棄すべき4パターン

相続とは原則「すべて」を引き継ぐ包括継承であるため必ずしも「現金」とは直接結びつかないようなものも引き継ぐことを忘れてはいけません。

<相続すべき4つのパターン>
①明らかに負債が多く見られる場合
②相続人が被相続人の生命保険の受取人であった場合
③被相続人が保証人であった場合
④相続税手続きに関与したくないと判断した場合

それぞれの内容について概要と注意点を解説していきます。

①明らかに負債が多くみられる場合

被相続人についてプラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)を見比べた結果、マイナス(負債)が多いという場合に相続放棄をすることで損害を被ることを回避することができます。マイナスの財産(負債)の具体例は下記のような債務があります。

・個人からの借り入れ
・賃金業者からの借り入れ
・金融機関からの借り入れ

また、相続放棄には申告期限があるので被相続人のマイナスの財産(負債)を早期に把握することが重要になります。借り入れ等の契約書や支払明細書の書類を確認しましょう。

②相続人が被相続人の生命保険の受取人であった場合

相続人が被相続人の生命保険の受取人であり、かつ被相続人の財産評価がマイナスであった場合、相続放棄を行うことで生命保険のみを受け取ることができます。
民法896条では「相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する。ただし被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。」とあります。一方生命保険は受取人固有の権利であり、被相続人の財産に属した権利義務ではないため民法上の相続財産には該当しません。つまり、相続放棄を行っても生命保険には影響を与えないということです。
相続放棄を行って生命保険を受け取る際の注意点は主に2つあります。まずすべての生命保険を受け取れるわけではないという点です。相続放棄をすると受け取ることができない生命保険として下記のようなものがあります。

・医療保険の入院給付金などで受取人が亡くなった人自身となっているもの
・亡くなった人が契約者のみに該当する生命保険の解約返戻金

このような生命保険は本来の相続財産として扱われるため、相続放棄をしてしまうと受け取ることができません。そしてもう1つは、生命保険はみなし財産として相続税の課税対象になっている点です。

③被相続人が保証人であった場合

相続において継承するのは金銭的財産のみならず被相続人の法的地位もその性質を許す限り継承の対象となります。被相続人が誰かの保証人になっていたら、相続人が保証債務を相続し保証人になってしまいます。
被保険者が保証人だったとわかった際にはまず「有益な資産で債務を清算できるか」「清算後にどのくらいの金額が残るか」を精査しましょう。そして保証人変更もしくは解除に応じてもらえるか、債権者や主催務者と相談します。これらを考慮したうえで金額が多額であり容易に返済することができないような場合には相続放棄を選択します。
ただし、保証した者と債務者の人的関係に基づく「身元保証債務」や、継続的取引から生じる債務を広く保証する「根保証債務(信用保証債務)」については、判断が複雑になるため相続の対象にならないものがあります。

④相続税手続きに関与したくないと判断した場合

相続手続きを経るためには相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。しかし、地方と都会で相続人同士距離が離れている、家族と会いたくない、話したくないなど家庭の複雑な事情によってこれらの手続きを行いたくない場合において相続放棄を行うことで対応できます。
また、遺産分割協議にかかわりたくないという理由で相続放棄したい場合、相続放棄申述書の「放棄の理由」欄には「その他」を示す「6」を丸で囲み、その右の括弧内に「遺産分割協議に関わりたくない」と記載します。

・相続放棄には申告期限があり、被相続人の財産の評価損は精査する必要があるので、相続した際には早期に確認書類を集める必要がある。
・相続放棄を円滑に行うために上記で述べた「相続放棄したほうが良い4つのパターン」事例それぞれの注意点を整理する。

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