相続節税対策で生命保険を活用する方法

近年、相続税の基礎控除額が引き下げられたために、一般の方でも相続税を支払うケースが増えてきています。
そこで比較的簡単に取り組める相続税の節税対策として、生命保険の活用方法を説明していきます。

目次

生命保険金はみなし相続財産

亡くなった被相続人が、生命保険金や損害保険金の保険料の全部または一部を負担していた状態で、相続人が生命保険金や損害保険金を受け取ったときに、この生命保険金は相続税の課税対象です。

このような生命保険金などは、民法上では相続財産の定義から外れてしまいますが、相続税の計算をする上では相続財産とみなされます。そのため生命保険金などは「みなし相続財産」といいます。

相続されるものには、土地、建物、現預金、株、債券などの財産だけだと思われがちですが、実際には死亡保険金や死亡退職金なども相続財産として取り扱う必要があります。

生命保険金の非課税枠とは

亡くなった被相続人が生命保険の保険料の支払いをしており、その保険金を相続人が受け取る際、その保険金は相続税の課税対象ですが、この時に非課税枠を活用できます。
はじめに相続税の税額計算をするのに必要なことは、相続税の課税対象となる相続財産の総額を求めることからです。
土地、建物、現預金、株、債権など亡くなられた被相続人が残した財産で相続税の対象となるものの評価額を合計します。この時、生命保険金があればこの金額も加えて計算していきます。
被相続人が保険料を支払っていた生命保険について生命保険金を相続人が受け取った際に、それはみなし相続財産として、相続税を計算するときに課税対象となる相続財産に加算しますが、その時に非課税枠が活用できます。
この非課税枠を活用すると、生命保険金の評価額は、相続人が受け取った金額の一部となり、課税される相続財産が減少するため、相続税の節税が可能になります。

①相続税の計算
相続税の計算方法は、課税遺産総額を法定相続人の法定相続分で按分して、その課税遺産総額にそれぞれ相続税率を乗じることで各相続人の法定相続分による相続税額を求めます。
その後、その各相続人の相続分による相続税額を合計することで相続税の総額を求めていきます。
相続税の総額に、各相続人が実際に相続をした相続財産の課税遺産総額に対する割合を乗じることでその相続人が支払う相続税額を求めることができます。
被相続人が保険料を支払った生命保険金には、課税遺産総額に対する各相続人が実際に相続した財産を計算するときにも特例があります。計算式は以下の通りです。

その相続人の課税対象となる生命保険金の金額
=(その各々の相続人が所得をした生命保険金の金額-非課税枠)×その相続人が所得をした保険金額÷全ての相続人が所得をした生命保険金額

②生命保険金の非課税枠
生命保険金の非課税枠の求め方は、500万円×法定相続人の数で計算できます。
このとき法定相続人の数は相続放棄をした人がいても、その相続放棄をした人を含めた人数で計算します。

法定相続人が配偶者と子どもが3人で、子どものうち1人が相続放棄をした場合、非課税枠は相続放棄をした人も含めて500万円×4人=2,000万円

養子が法定相続人になっている場合は、さまざまな条件により制限があるために注意をしてください。

相続節税対策で生命保険を活用する方法

生命保険金を活用すると節税につながるのは、上記で述べた非課税枠があるので可能です。
相続税の金額については、『課税遺産総額-(3,000万円+600万円×法定相続人)』×国税局の速算表に応じた税率-その速算表に応じた控除額で求めることができます。

相続税の税率は以下の速算表に応じた税率です。

●相続税の速算表

法定相続分に応ずる所得金額税率控除額
1,000万円以下10%なし
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

ここでは簡単な例から計算して、節税につながることを説明していきます。

①生命保険を活用しない場合
相続人を2人として、被相続人が残した課税遺産総額を7,000万円と仮定します。
基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
基礎控除したあとの課税遺産総額:7,000万円-4,200万円=2,800万円
相続人で均等に分配するときそれぞれ1,400万円ずつの配分となります。
上記の速算表から税率は15%、控除額は50万円とわかります。
よって相続税額は一人当たり1,400万円×15%-50万円=160万円
2人分なので全体の相続税額は320万円となります。

②生命保険を活用する場合
同じ場合で被相続人が生前に3,000万円分の生命保険料を負担して、相続があった際に相続人が3,000万円の生命保険金を所得ができるような保険契約を契約していたと仮定したときに相続財産は4,000万円生命保険金はみなし相続財産となるので金額は3,000万円となり計算の内訳が変わります。

生命保険の非課税枠:500万円×2人=1,000万円
相続財産の合計:4,000万円+(3,000万円-1,000万円)=6,000万円
基礎控除額:(1)と同様の4,200万円
基礎控除したあとの課税遺産総額:6,000万円-4,200万円=1,800万円
相続人で均等に分配するときそれぞれ900万円ずつの配分となります
上記の速算表から税率は10%、控除額はなしとわかります。
よって相続税額は一人当たり900万円×10%=90万円
2人分なので全体の相続税額は180万円となります。

計算結果から課税遺産総額に生命保険金を含まないケースと比べると140万円ほど相続税が節税されます。

保険金受取人により税金が変わる

生命保険契約にはいろいろなパターンがあります。
それによって生命保険金の受取人に課税される税金の種類が違うので注意をしましょう。

①相続税に該当する場合
保険料を被相続人が負担し、保険金の指定受取人を相続人としている保険契約で被相続人が亡くなったあとに相続人が保険金を所得したときが該当します。

この時に指定受取人が法定相続人以外の甥や姪を相続人として受け取った場合には上記で述べた保険金の非課税枠の活用はできないので注意が必要です。

②所得税に該当する場合
また、保険料の負担を相続人がして、被保険者を被相続人にし、保険金の受取人を相続人とした契約で、被保険者の被相続人が亡くなったことにより指定受取人である相続人が保険金の所得をしたときが該当します。

③贈与税に該当する場合
最後のケースとして保険料の負担を相続人である妻がして、被保険者を被相続人である夫とし、保険金の受取人を相続人である子とした契約で、被保険者の被相続人である夫の死亡で指定受取人である相続人である子が保険金の所得をしたときが該当します。

まとめ

命保険の非課税枠は、500万円×法定相続人の数です。

相続税対策として簡単に活用できますが、その保険の契約者(保険料支払者)=被相続人、被保険者=被相続人、受取人=法定相続人の要件を満たすことが条件となり非課税枠を適用できます。

契約者や被保険者、受取人により税金の種類が違い節税対策として意味をなさないこともあり得ますので、契約時には十分注意が必要です。

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