遺留分=受取りを主張できる相続財産

相続財産の分割にあたっては、基本的に話し合いによります。
もしも、話し合いの結果、相続人の全員が認めるのであれば、ある1人がすべての相続財産を相続することも可能となります。
基本的には民法により“法定相続分”という遺産分割にあたっての参考が示されているので、おおよそその基準に基づくように相続人の取り分が決まり、話し合いの段階で分割が終わります。

しかし、近年の相続については“争族”とも比喩されるように、相続額が大きくなるほど、また、不動産や株式などの均等に分割することができない資産の相続、遺言書による不均等な遺産分割、さらには相続自体があったことを知らなかったことなど、様々な理由で相続争いが頻発しています。互いに譲歩し合い、遺産分割協議(話し合い)でそれぞれの取り分が決まるのであればそれが一番ですが、現実としてそううまく行くことはありません。

実際問題として、争族となってしまった時、どのような手続きが考えられるのでしょうか。

目次

遺留分の意味するところ

遺留分とは、“亡くなった方と近い関係にある一定の法定相続人のみに認められる、後からでも請求することにより受取れる相続財産”です。

例えば、

  1. 法定相続分通りに公平に相続を終えたと思っていたが、相続終了後しばらくたってから、自分の知らないうちに故人が生前に不動産を他の相続人に贈与していたことがわかった。
  2. 故人の相続財産が不動産1棟のみであったため、分割できないものと思って仕方なく他の相続人に相続を認めた。
  3. 遺言書には長男へほぼ全ての相続財産を相続することと書かれていたため、そういうものだと諦めて遺言書通りの相続をおこなった。

以上のケースについて、遺留分の主張・請求を行うことで遺留分の額を限度に相続財産の受取り不足分を取り戻せる可能性があります(遺留分減殺請求といいます)。

遺留分はあくまでも権利であり、主張は出来ますが、必ず主張しなくてはならないというものではありません。

しかし、相続は急に始まり、故人との思い出をゆっくり振り返る暇もなく、慣れない葬儀や役所手続きの連続、相続の確定申告も10ヶ月以内と息をつく暇もありません。そのような多忙な中では、遺産分割の話し合いも妥協しやすく、ましてや故人が生前に誰かへ贈与を行っていたかどうかなど調べている時間も無いかと思います。  こういった場合に泣き寝入りすることにならないよう、遺留分の制度はありますので、頭の片隅に知識として備えておく必要があります。

遺留分の要件

遺留分がある相続人

故人の法定相続人である“配偶者”“子供”“親・祖父母”のみ

遺留分の額

基本的には法定相続分の二分の一。親のみは例外あり

遺留分が発生する可能性のある場合をまとめると、

遺留分請求権利がある法定相続人

遺留分

ケース1

配偶者のみ

1/2

ケース2

配偶者・子供

1/4・(子供合計で)1/4

ケース3

子供のみ

(子供合計で)1/2

ケース4

配偶者・親

1/3・(親合計で)1/6

ケース5

親のみ

(親合計で)1/3

以上のケースのいずれかとなります。

遺留分権利の時効

相続があった日から10年以内、または、遺留分が取得できていないことを知った日から1年以内に主張・請求すること。
遺留分には時効があります。相続に関して気になる点があったなら直ぐに専門化へ相談しましょう。

生前贈与で遺留分の計算に含める期間

故人が亡くなる前1年間にあった贈与。
故人と接触が少なくなっていた場合、生前にあった贈与については調べなければ気付けないこともあります。
また、不動産や株式などの相続・贈与に関しては、税理士など専門家でないと評価額の算出が困難な場合があります。こちらに関しても気になる点は専門家に相談された方が無難でしょう。

遺留分の請求

遺留分を取得できていないことに気付いたとき、遺留分請求(遺留分減殺請求)のために取る手続きについても相続と同じく、

  1. まずは主張・請求をおこない、当事者間で話し合いをする。
  2. 話し合いで解決できなければ裁判所へ調停申立て、和解を探る。
  3. 和解で解決しなければ訴訟へ。

という流れとなります。

 遺留分の請求にあたり、忘れずに行うべきことは、“そもそも遺留分請求をおこなったところで戻ってくる遺留分があるのか、金額はいくらくらいか”といった事前確認です。

準備をしておくと、その後の他相続人への請求にあたっても説得力が違いますので最初の話し合いの段階での和解に繋がりやすいことに加え、もしも裁判所で訴訟の段階まで争族がもつれこんでしまった時にも役立ちます。

実際のところ、遺留分請求額の算定にあたり、故人の生前1年間の贈与状況とその贈与資産の贈与時時価、相続時点の相続資産の時価など調べていく必要がありますが、一般個人の方でできることは限界がありますので、こちらも税理士など専門家に相談することをお勧めします。

また、相続相談にあたっては各種専門家が存在しますが、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。

遺産分割協議書の作成や訴訟にあたっての法律関係、資産評価などについては司法書士や弁護士、不動産鑑定士など各種専門家の出番となりますが、まず一番初めに行うべきは税金関係の確認です。一定の場合によってはそもそも相続税が発生しないケースもありますので、そのようなときには資産評価なども不要となる可能性もあります。

そのため、まずは税理士に相談してみましょう。

目次