代表相続人の選出と役割について

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代表相続人とは?

遺産相続の手続きに複数の相続人がいる場合に、代表して、相続に関するさまざまな手続きを行う方が代表相続人です(相続代表者と呼ばれることもあります)。
代表相続人は、税務署での相続税の支払いや、金融機関での遺産の口座の解約などの手続きを代表して行います。
全ての手続きを同じ代表相続人がする必要はなく、税務申告や金融機関の手続きなど、それぞれの手続きを別々の代表相続人が行うことも可能です。

代表相続人適任者の選び方

相続人であれば誰でも代表相続人になることができ、代表相続人になるための優先順位もありません。特に取り決めはありませんが、一般的に相続人同士の話し合いで代表相続人を選ぶのが良いと思います。

固定資産税の手続き

資産税の納税通知書は、年度の1月1日現在、納税の対象となる不動産を所有している登記名義人宛に送付されます。よって、年度の途中に被相続人(遺産を残して亡くなった方)が亡くなった場合、納税通知書は被相続人宛にその住所地に送付されることになっています。
既に亡くなっている被相続人に納税通知書が送られてきた場合、それに気が付かずに固定資産税が納付されないまま長期間が経過してしまう可能性があります。
相続人代表が選出されていれば、相続人の中から納税通知の通知書を受け取ることが可能であり、固定資産税を滞りなく支払うことができます。
固定資産税の管轄である市区町村としては、不動産を共有している相続人全員に通知書を送付するのは手間がかかるため、代表相続人が選出されていることは手続きが簡便になるということで、お互いにメリットがあります。
固定資産税の納税通知書を代表相続人が受け取る方法は、納付先である市区町村に相続人代表者指定届という書類を提出します。
ここで注意点として、代表相続人が不動産を相続するわけではなく、代表者が固定資産税の全額を支払う必要がありません。
仮に、固定資産税の対象となる財産を相続する相続人が決まらないうちに、代表相続人が納付を立て替えた場合、最終的に財産を相続した相続人に対して立て替えた費用を請求できます。

相続税の申告手続き

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署に行うことになっており、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限です。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません。

そのために、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税を行います。
つまり、亡くなった被相続人から各相続人が取得した相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合に課税対象となる税金が相続税であり、非相続人が亡くなってから10ヵ月以内に申告することになっています。
相続税申告書は多くの書類を記載したり、添付書類を収集する必要があります。
仮に相続税の修正申告や更正の請求を申告する場合は、さらに多くの書類を記載する必要があると考えられます。
修正申告は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合に行うことができ、更正の請求は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合に行うことができます。修正申告と異なり、更正の請求ができるのは、分割のあったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。
相続税の申告書は相続人だけで作成することも制度上可能ですが、専門的な知識が必要になり複雑な場面が多く、相続人だけでは作成することが難しく多くの時間と労力を要すると思われます。
そのため、スムーズに相続税の申告を完了するためには、専門家の税理士に作成を依頼することをお勧めします。
税理士に相続税申告の手続きを依頼する時のポイントとして、あらかじめ代表相続人を決めておいた方が税理士との連絡や必要な資料などの収集・各種の手続きがスムーズに行われると考えられます。

金融機関での手続き

相続人が相続した財産の中には、預貯金や有価証券などの金融資産が含まれている場合があります。遺産分割協議が終了するまでは相続人全員の共有になるため、払い戻しや名義変更などの手続きを行う必要がある時には、相続人全員が金融機関に行くのが原則です。
相続全員で金融機関の手続きを行うとなると非常に時間と労力を要し、また、相続人全員の都合が合わない場合もあります。
この様な場合も、あらかじめ代表相続人を決めておいた方が金融機関との連絡や必要な資料などの収集・各種の手続きがスムーズに行われると考えられます。
また、金融機関の側にとっても代表相続人がいれば、金融機関との連絡や必要な資料などの収集・各種の手続きがスムーズに行われ、双方にとってメリットがあると思われます。
代表相続人は相続人全員の代表者として手続きを行うのみで、他の相続人は、代表相続人に印鑑登録証明書や委任状などの必要書類を渡して手続きを代行してもらいます。
代表相続人は手続きを代行するのみで、預貯金などを取得する権限や、口座の新しい名義人になるという事ではありません。
相続税申告は10ヵ月以内の申告期限があるため、あらかじめ代表相続人を決めておいた方が資料などの収集・各種の手続きがスムーズに行われると考えられ、税理士への相続税申告の手続き依頼も申告期限内に余裕をもって行うことが出来ると思います。

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