愛人がいた場合の相続について

被相続人が亡くなり、しばらくしてから「愛人が出てきて遺産相続で揉めた」というようなお話がテレビドラマなどで見られますが、このようなことは決してドラマの中だけの事ではなく、実際に相続の現場では起こりえる事です。今回は愛人の遺産相続について見ていきたいと思います。

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愛人や内縁の妻(夫)には相続権がない

被相続人の愛人や内縁の妻(夫)は、婚姻関係がないため法律の上では法定相続人にはなれません。相続については民法の規定により財産を受け取る法定相続人が定められおり、被相続人の配偶者、被相続人の子どもや親、及び被相続人の兄弟姉妹といった血縁関係にある人とされています。
従って、被相続人と婚姻関係のない愛人や内縁の妻(夫)には原則として相続権が発生しません。
ここで愛人と内縁の妻(夫)の違いについて少しお話ししておきます。

(1)愛人とは
愛人とは、一般的には「相手に配偶者がいることを認識しており、その上で交際をしている関係」という事になります。そのため、別の正式な配偶者がいる人の不倫相手であるため、基本的には法律上、保護されることはありません。

(2)内縁の妻(夫)とは
互いに既婚者ではないものの入籍は行わず、それでも長年一緒に暮らしていれば、事実婚関係とみなされます。一般的に「内縁の妻(夫)」とは、婚姻届けは出していないながら夫婦としての自覚があり、婚姻に準ずる関係として、正式に婚姻している場合ほどでないまでも、様々な法的保護を受けられるようになっています。
このように社会的立場には大きな差がありますが、愛人も内縁の妻(夫)も婚姻届を提出している法的な配偶者として認められているわけではないため、原則的には相続権がないものとして扱われることになります。

相続人がいない場合は、特別縁故者として相続可能か?

被相続人が独身であり、父母や兄弟姉妹がすでに亡くなっているなど、上記の民法で定められた法定相続人が相続開始時に存在しないケースには、被相続人と特別な縁故があった人がいれば、その旨を家庭裁判所に申し立てると「特別縁故者」として遺産を相続できる可能性があります。
特別縁故者として被相続人の財産を相続するためには、相続人の不存在が確定してから3カ月以内に「特別縁故者の相続財産分与の請求」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。申立人となれるのは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」が該当します。

遺言がある場合には愛人も相続できる

被相続人が生前作成した遺言に「愛人(内縁の妻(夫))に財産を譲る」旨を記載していた場合、もしくは愛人(内縁の妻(夫))と死因贈与契約が結ばれていた場合には、婚姻関係がなくても遺産を相続することができます。これは遺言書の内容が法定相続人よりも優先されるためで、愛人や内縁の妻(夫)は法定相続人になることはできませんが、被相続人による遺言書の内容によっては遺産を相続する権利を得る場合があります。
遺言書で愛人や内縁の妻(夫)が相続人として指定されている場合は、法定相続よりもその内容が優先されることになります。
ただし、遺言書に不備がある場合や、法定相続人の遺留分について侵害しているなど、内容によっては愛人(内縁の妻(夫))が実際に遺言通りに相続できるわけではありません。
なお、死因贈与とは、「私が死亡したら愛人(内縁の妻(夫))に財産を渡す」といった内容の贈与契約です。遺言と異なるのは、遺言は被相続人が一方的に遺産を渡す旨を記載しているのに対し、死因贈与は遺産を受け取る人と生前に合意していることが特徴です。

遺言書に「愛人へ全財産を相続させる」と書かれていた場合

上記で遺言書で愛人(内縁の妻(夫))に財産を譲る旨を記載していた場合には、遺産を相続する権利を得ることができますが、その遺言書に「愛人(内縁の妻(夫))へ全財産を相続させる」というような記載があった場合、その遺言に従わなければならないのでしょうか。
 
(1)「遺留分侵害額請求」をすれば、愛人に全財産を相続されない
法定相続人より遺言書の内容が優先されるとはいえ、法定相続人には、遺言でも侵害することができない最低限の遺産が確保されています。この最低限確保されている遺産額を「遺留分」と言い、「遺留分侵害額請求」をすることで、受け取ることができます。
これは、相続には配偶者その他直系の親族の生活を維持させるという側面もあるため、法定相続分より多くの遺産を相続した人物に対して、遺留分にあたる金額を請求できる「遺留分侵害額請求」という制度が設けられています。
ただ、制度の趣旨から遺留分侵害額請求を行える人は決まっており、被相続人の配偶者や子ども、及び父母・祖父母とされており、相続分の第三順位である兄弟姉妹については遺留分侵害額請求をする権利は認められていないため注意が必要です。
なお、遺留分の割合は法定相続分の1/2です。例として、相続人が妻と子2人の場合は、
妻の遺留分は1/2×1/2=1/4となり、子各々の遺留分は1/2×1/2×1/2=1/8となります。
このように被相続人の妻や子が「遺留分侵害額請求」を行なえば、愛人(内縁の妻(夫))が受け取るのは全財産でなく、遺産の一部になります。
 
(2)遺言書の無効を訴えることができる
遺言書の内容によっては、遺言書を無効にすることができます。
例として、以下をを裁判所に訴えます。

・遺言書の形式不備による無効の訴え
・遺言書が公序良俗に反するものとして無効の訴え
・遺言を書いた時における被相続人の遺言能力の喪失の訴え 

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