家屋と貸家の相続時の評価について

被相続人(亡くなった人)が不動産を所有していた場合、土地はもちろんのこと、家屋についても評価額を算出した上で、遺産総額に加算する必要があります。土地は国税庁が毎年7月に公表する『路線価方式』で計算を行うことになりますが、ここでは建物についての評価方法について解説します。

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家屋の相続税評価の方法について

相続財産評価基本通達88および89で、自宅建物の相続税評価の方法は、以下の様に評価することと記載されています。
『88 家屋の価額は、原則として、1棟の家屋ごとに評価する。』
『89 家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条((固定資産課税台帳の登録事項))の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。』

これを要約すると、建物の評価は1棟ごとに、固定資産税評価額(毎年6月頃に市区町村や都税事務所から届く固定資産税通知書・評価明細書に記載)を評価額が、そのまま相続時の建物の評価額として良いことになります。
不動産鑑定価格等、その他の具体的根拠があればそれを用いることも可能ですが、一般的に固定資産税評価額は、実際の不動産の時価(取引相場)の70%程度として評価されていることが多く、結果的に、固定資産税評価額を用いた方が相続税を抑えられるケースがほとんどです。

なお、市区町村(東京23区は都税事務所)から届く固定資産税通知書・課税評価明細書が手元に見当たらない場合は、市区町村役場の窓口で固定資産税評価明細書を発行してもらっての確認が可能です。
所有者本人が行けば、身分証による本人確認のみで取得が可能ですが、相続人が取得する場合は、相続人であることを証明する戸籍謄本と、身分証明書が必要となります。第三者の代理人が取得する場合は、さらに本人や相続人からの委任状が必要となります。

貸家の相続税評価額について

一棟の賃貸物件を所有している場合には、自宅建物の評価より計算が複雑になります。
その評価方法とは、先程の固定資産税評価額に、1から借家権割合(一律30%)控除した割合を乗じた価額となります。

例)
<固定資産税評価額1,000万円の評価対象貸家の場合の当該貸家の相続税評価額>
500万円×(100%-30%)=700万円

<相続財産がアパート等の場合の相続税評価>
賃貸物件(一棟)の相続税評価額=アパートの固定資産税評価額×(1-借家権割合(30%)×賃貸割合※)

※賃貸割合とは、満室時を100%とした場合、相続時点で何%の部屋が賃貸の状態にあったかという割合のことで、仮に10室のアパートがあり、そのうちの8室が賃貸で埋まっていた場合の賃貸割合は、
8室÷10室 ×100% = 80%
ということになります。
つまり、賃貸物件の相続税評価額の算式に当てはめた場合、空室が多いこと=相続税評価額が高くなる(相続税が上がる)ということに繋がってくるのです。

しかし、不動産賃貸の性質柄、時期によっては一時的に入居者が退去しているということもあるでしょう。
そのような場合については、退去後のハウスクリーニングや不動産仲介業者を介しての入居募集等、入居のための努力を行うことで、賃貸しているものとして計算しても構いません。
国税庁の質疑応答事例の中でも回答がなされており、『一時的に空室となっている部分は実際に賃貸されているものと見なして評価を行っても差し支えない』ということが記載されています。

建築中の家屋の相続税評価について

被相続人が住宅を建築中に亡くなってしまった場合も、建築中の建物に対して評価を行う必要があります。
そのようなケースの場合、被相続人がその建物の建築するに際して支払った金額の70%を建築中の建物の評価額とすることとされています。
例えば、相続開始時点までに総額1,000万円を支出していたとすると、その建築中の建物の相続税評価額は700万円です。

なぜ、賃貸物件はこのような評価方法を取るのかというと、賃貸物件に住んでいる入居者の権利がある程度守られる必要があります。つまり所有者である大家の権利が制限されることから、その分を割引いた上で評価額を計算する必要があるという訳です。

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