被相続人の愛人や認知を受けていない子ども、内縁の妻には相続権はなく、遺産を受け取れないのが原則です。しかし、遺贈や死因贈与を受けた場合には、財産を取得することができます。これにより、相続人の遺留分を侵害する場合、侵害額の賠償を請求される場合があります。また、特別縁故者に当たる場合にも、遺産を取得できる場合があります。
愛人やその子どもは相続できるか・贈与した場合はどうか
亡くなった方(被相続人)の愛人は、法律上の相続人(法定相続人)ではなく、原則として、相続権はありません。また、愛人の子どもは、被相続人の子どもだとしても、認知されていなければ、法定相続人ではなく、相続権はありません。しかし、愛人やその子どもが被相続人の遺産を取得できる場合もあります。
- 被相続人が愛人の子どもを認知した場合
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被相続人が、愛人との間にできた子どもを認知した場合には、その子どもは被相続人の法定相続人となり、他の相続人と同様に被相続人の財産を相続します。被相続人は、存命中に認知していない場合、遺言によって認知することができます。
また、被相続人による認知がない場合、死後認知の訴えにより認知されることもできます。
- 養子縁組をしている場合
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被相続人が、自分の子どもではない愛人の子どもと養子縁組をした場合、その子どもは、被相続人の法定相続人となり、他の相続人と同様に被相続人の財産を相続します。
- 遺贈・死因贈与があった場合
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被相続人の財産について、遺贈又は死因贈与を受けた場合、愛人やその子どもは、その財産を取得することができます。遺贈とは、遺言により、財産を相続人や第三者に贈与することをいいます。死因贈与とは、死亡を原因として、贈与者の財産を受贈者に贈与するという契約です。
しかし、遺贈や死因贈与により遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求がなされた場合、その相続人に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払をしなければならない場合があります。
- 相続人がいない場合
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被相続人に相続人がいない場合や全相続人が相続放棄をした場合、愛人やその子どもが特別縁故者に当たれば、被相続人の財産を取得することができる場合があります。特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者をいいます。
- 愛人やその子供に課される相続税
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被相続人の愛人やその子どもが遺贈や死因贈与、特別縁故者として、遺産を取得した場合、相続税が課されます。愛人やその子どもは、被相続人の法定相続人ではないので、基礎控除額の計算対象となりません。また、相続税額は、20%加算されます。
さらに、愛人は、配偶者ではないので、配偶者の税額軽減は受けられません。他方、愛人やその子どもが未成年者や障害者である場合、未成年者控除や障害者控除の対象になります。
愛人やその子どもが相続する方法とその手続
愛人やその子供が相続できるかどうかについて、認知された場合、養子縁組となった場合、遺贈された場合、特別縁故者の場合、相続が可能となります。
- 認知・養子縁組された子どもの場合
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被相続人に認知された子どもや養子縁組された子どもは、被相続人の法定相続人として、被相続人の財産を相続します。原則として、その方法や手続きは通常の相続と変わるところはありません。
- 死後認知の場合
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被相続人が存命中に認知せず、遺言によっても認知せずに死亡した場合、裁判所に認知の訴えを提起することにより、被相続人と愛人との間の子どもを認知することができます。この場合、訴える相手は、検察官になります。この訴えは、被相続人の死亡後3年以内に提起する必要があります。
死後認知が認められる前に、他の相続人により遺産分割がなされた場合には、死後認知された子どもは、被相続人の財産を相続することはできませんが、その法定相続分に相当する金銭の支払いを受けることができます。
- 愛人やその子どもに包括遺贈や特定遺贈・死因贈与がある場合
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愛人やその子どもが被相続人から、全財産について、又は、特定の財産を指定して、遺贈又は死因贈与を受けた場合、特別な手続きをせずとも、その財産の所有権を取得することができます。
- 遺贈や死因贈与により不動産や車両の贈与を受けたとき
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不動産や車両など、登記又は登録が必要な財産の名義を変更するためには、受遺者(死因贈与の場合は受贈者)と遺言執行者(死因贈与執行者)又は遺言執行者等がいない場合は相続人全員が共同して、登記又は登録の手続きをする必要があります。
死因贈与された不動産等の登記等をする場合には、死因贈与契約書が必要です。贈与者と死因贈与契約を締結した場合、死因贈与契約書を作成し、公正証書としておき、かつ、仮登記をしておくと、贈与者の死亡後の本登記の申請手続きが容易になります。
- 割合的包括遺贈・死因贈与がある場合
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被相続人から、特定の財産を指定せず、財産の一定割合について、遺贈又は死因贈与を受けた場合、法定相続人と遺産分割協議をして、具体的にどの財産を取得するかを決定する必要があります。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書があれば、受贈者が単独で、不動産や車両など、登記又は登録が必要な財産の名義を変更することができます。
- 特別縁故者の場合
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特別縁故者として、被相続人の財産を取得するには、家庭裁判所に相続財産分与の申立をする必要があります。この申立は、家庭裁判所により選任された相続財産管理人が被相続人の債務を弁済した後、相続人を捜索するための公告をし、相続人が現れることなく、一定期間(通常6か月)が経過した後、3か月以内に行う必要があります。
内縁の妻は相続できるか・贈与した場合の手続き
内縁の妻が相続権を有するか否かについては、愛人の場合と変わりません。ただし、内縁の夫が賃借していた建物に同居していた場合であり、相続人がいない場合、内縁の妻は、その建物に居住し続けることができます。
内縁の妻が相続する方法とその手続きについては、愛人の場合と変わりません。