農地の相続手続きと相続税の納税猶予制度について

農地を相続した場合、登記及び農業委員会への届け出が必要です。

農地の相続税評価額の算定方法は、農地の区分によって異なります。また、相続税評価額を減額できる制度や納税猶予の制度もあります。相続税評価額の算定を誤ると、相続税を払いすぎたり、逆に、過少申告となり加算税が課されたりするので、農地の相続税評価は慎重に行いましょう。

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農地を相続する方法(農地法)

法定相続人が農地を相続する場合

法定相続人が農地を相続する場合には、相続登記をして、農業委員会に届け出をすることが必要です。相続登記については期限はありませんが、農業委員会への届け出は、相続開始を知ってから10か月以内とされていますので、相続登記もそれに合わせて10か月以内に行う必要があります。農業委員会に届け出をしなかったり、虚偽の届け出をしたりした場合、罰則(10万円以下の過料)を受ける恐れがありますので、注意が必要です。

遺産分割協議が10か月以内にまとまらない場合

もし、相続開始を知ってから10か月以内に遺産分割協議がまとまらず、農地を引き継ぐ相続人が決まらない場合には、一旦、相続人全員の共有として登記した上で、農業委員会に届け出をし、遺産分割協議がまとまり次第、再度、単独名義で登記をして、農業委員会に届け出をすることになります。

贈や死因贈与により、法定相続人以外の者が農地を取得する場合

遺贈や死因贈与により、法定相続人以外の者が農地を取得する場合、農業委員会による許可が必要になります。その許可を得てから法務局に登記することになります。農業委員会による許可を受けずに農地を取得した者は、罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)を受ける恐れがありますので、注意が必要です。

農地の相続税評価額は

相続税評価額算定における農地の区分

農地の相続税評価額の算定方法は、農地の区分により異なっています。農地は、純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地という4つに区分されます。相続した農地がどの区分に該当するかは、国税庁のウェブサイトの「評価倍率表」で調べることができます。ただし、評価倍率表上は純農地等であっても、農地以外のものに転用する許可を得た農地は、市街地農地になりますので注意してください。転用許可を得ているかどうかは、その農地のある市町村役場内の農業委員会で確認できます。

純農地及び中間農地の評価方法

純農地及び中間農地は、倍率方式により評価します。その農地の固定資産税評価額に評価倍率を乗じて計算した額が相続税評価額になります。評価倍率は、「評価倍率表」に記載されています。

市街地周辺農地の評価方法

市街地周辺農地の相続税評価額は、下記に述べる市街地農地と同じ方法により算定した額の80%の価額になります。

市街地農地の評価方法

市街地農地は、宅地批准方式又は倍率方式により評価します。
宅地批准方式とは、「相続した農地を宅地として評価した1㎡の価額」から、「その農地を宅地に転用する場合に必要な1㎡あたりの造成費」を控除し、それに地積を乗じて相続税評価額を算定する方式です。

「相続した農地を宅地として評価した1㎡の価額」の算出方法

その農地が路線価地域にあるか、倍率地域にあるかにより、「相続した農地を宅地として評価した1㎡の価額」の算出方法が異なります。

路線価地域にあれば、路線価を基に各種補正をして計算します。倍率地域にある場合は、近隣の宅地の1㎡当たりの価額に宅地の評価倍率を乗じた上で各種補正をして計算します。農地としての固定資産税評価額や評価倍率ではない点にご留意ください。

「その農地を宅地に転用する場合に必要な1㎡あたりの造成費」の算出方法

「その農地を宅地に転用する場合に必要な1㎡あたりの造成費」は、毎年都道府県ごとに国税庁が発表しています。国税庁のウェブサイトの「宅地造成費の金額表」に記載されています。各項目の中から、実際に農地を宅地化するために必要となる費用を積算して造成費を算出します。

相続税評価額の減額

相続した農地が「地積規模の大きな宅地」や「生産緑地」に該当する場合や耕作権、永小作権などが設定されている場合など、一定の場合には、相続税評価額が減額できる場合があります。

農地の相続税の納税猶予制度とは

農地の相続税の納税猶予

被相続人が農業を営んでいたか、又は特定貸付け等を行っていた場合、その農地を相続した相続人が、農業を営む場合又は特定貸付け等を行う場合は、特例により、相続税の一部の納税が猶予される場合があります。納税が猶予されるのは、相続税評価額にかかる相続税から、農業投資価格によって計算した相続税を控除した額です。そして、納税猶予の期間は、取得した農地について相続人が農業の継続又は特定貸付け等を行っている期間となります。

農業等を継続する限り、納税が猶予されることになりますが、農地を処分したり、農業等をやめたりした場合、納税を猶予された相続税とそれにかかる利子税を納付しなければならなくなるので、注意が必要です。

相続税の納税免除

上記の特例により、納税が猶予された相続税は、(1)その農地を相続した相続人が死亡した場合、(2)その農地の全部を農業の後継者に生前一括贈与し、贈与税の猶予を受けた場合(特定貸付け等を行っていない相続人に限る)、(3)相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続したときは、納税が免除されます。

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