相続財産としての銀行預金に係る相続手続き
亡くなられた方(被相続人)の 銀行預金口座は、死亡した日に相続人の相続財産となります。そして、相続人が複数人いる場合は、すべての相続人の共有財産となります。
そのため、被相続人の 銀行預金口座の名義を相続人の名義に変える手続きが必要であったり、相続人が複数人いる場合は、場合によっては遺産分割の対象となり、その分割の手続きのために被相続人の銀行預金口座の解約または名義変更の手続きをする必要がでてきます。
相続による銀行預金口座の解約や名義変更の手続きには、必要な書類がたくさんあります。また、相続人が複数人いる場合は、全員の書類が揃うまでに時間を要する場合もあります。
相続による銀行預金口座の解約や名義変更は、実際の手続きもとても大変なのですが、必要な書類を一式揃えることに大変な労力を必要としてしまいます。
特に、相続人が複数人いる場合は、相続人全員の直筆の署名と実印の押印が必要になりますので、他の相続人が遠く離れた所に住んでいたり、ずっと連絡をとっていなかったことで疎遠になっていたりする場合は、全員分を揃えるのに相当な時間がかかることがあるので注意が必要です。
また、被相続人の取引金融機関が複数に渡る場合は、すべての金融機関での手続きが必要となります。
相続時の銀行預金の解約手続きは
被相続人の預金口座は、被相続人が死亡したことを金融機関が知った時点で凍結(預金口座取引停止)されます。そして、預金口座が凍結された場合は、入金や出金、振替や引き落としなどの、すべての預金取引ができなくなります。
それは、相続が開始されることにより、被相続人の財産を保全する目的からです。ただし、例外的に、葬儀費用などが必要な場合は、出金が認められる場合があります。
凍結された預金口座の資金を複数の相続人で分割する場合は、相続による解約の手続きが必要です。解約の手続きにより解約された被相続人の預金口座の資金は、相続人の預金口座に振り込まれることになります。
最近では、金融機関によっては、相続の手続きを専門とする部署がありますので、そちらに連絡することで、一貫して相続の手続きを進めることができます。
手続きの所要期間も金融機関によって違いますが、手続き完了まで2週間くらいから1か月ほどかかる場合もあります。結構な時間がかかることを考えたら、できるだけ早めに手続きを始めるのがよいでしょう。 窓口での手続きだけではなく、郵送のやり取りだけで手続きができる金融機関もあります。金融機関によって違いますので、事前に確認のうえ手続きして下さい。
銀行預金の解約手続きにおける必要書類は
銀行預金の解約手続きに必要な書類は以下の通りです。相続による銀行預金口座の解約手続きについては、遺言書があるか、遺産分割協議書があるかなどで、必要な書類が違ってきます。
また、金融機関によっても必要な書類や手続きの方法はそれぞれですので、手続きを始める前に、金融機関に確認してから準備を始めるとスムーズな手続きができるでしょう。相続手続きについて、事前相談を設けている金融機関もあります。金融機関によって違いますので、確認のうえ手続きして下さい。
銀行所定の手続き用紙
- 被相続人の通帳、キャッシュカード
- 被相続人の出生から(金融機関によっては所定の年齢から)死亡までの連続した戸籍謄本(発行されてからの有効期間は、金融機関や取引によって違います)
- 相続人(相続人が複数人の場合は全員)の戸籍謄本
- 相続人(相続人が複数人の場合は全員)の実印、印鑑登録証明書
- (事例により)遺言書、遺産分割協議書、調停調書や審判書、相続人が複数の場合の相続人全員の同意書など
※平成29年から、法定相続情報証明制度により、法定相続情報一覧図の写し(法務局交付)があれば、謄本等の提出が不要になりました。
相続時の銀行預金の名義変更手続きは
相続人が一人の場合や、相続人が複数人いる場合に被相続人の銀行預金口座の相続人が決まった(決まっている)などの場合、前述の解約手続きをとらずに、相続による被相続人の預金口座の名義変更を行い、相続人が口座の名義人となり、預金口座を存続させることができます。
銀行預金の名義変更手続きにおける必要書類は
銀行預金の名義変更手続きにおける必要な書類は、解約の手続きにおける必要な書類と基本的には同じです。念のため、金融機関に確認しておいたほうがよいでしょう。
銀行預金の解約や名義変更の手続きの期限はいつまでか
銀行預金の解約や名義変更には基本的に期限はありません。ただし、相続税の申告、納税の期間は、相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内となっていますので、早めの手続きが必要となる場合があります。
相続手続きの大変さや、相続人が複数人いる相続については相続人同士でトラブルになりやすいことからも、相続による銀行預金口座の解約や名義変更の手続きについては、相続の専門家に相談することをおすすめします。