被相続人が亡くなり、相続手続きを進める際、相続登記や相続税の申告においても必ず必要になってくるのが戸籍の収集です。
相続人にとっても普段行う手続きではないので、分かりづらく、非常に煩雑な作業となります。今回は戸籍の取得方法についてご案内します
相続手続きに戸籍謄本が必要な理由
戸籍謄本が必要な主な理由は、相続人の確定を行うためです。
つまり、相続手続きを行う申請先(税務署、金融機関、保険会社、法務局など)は、相続人を確定しないと受理できませんので、戸籍謄本を確認するのです。
そのため、被相続人に子供が何人いて、兄弟が何人いるかなどの情報を得るために戸籍謄本を取得するのですが、最新の戸籍謄本のみではわからない情報が過去の戸籍謄本には記載されていることもあり得るので、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本を用意する必要があります。
戸籍とは?
戸籍とは、出生や婚姻、または死亡したことまで個人の一生が記録されている証明書です。戸籍は夫婦とその子供、親子二代の身分関係がひとつの単位として成り立っており、戸籍に記載されている内容は、「本籍地、氏名、性別、生年月日、戸籍に入った年月日、父母・養父母の氏名と続柄、他の戸籍から入った人は元の戸籍」などが記載されています。
なお、戸籍の主な種類として、「戸籍謄本」と「戸籍抄本」がありますが、「戸籍謄本」は、戸籍に記載されている全部の者を証明するものであるのに対し、「戸籍抄本」は、戸籍内の一部の者を証明するものです。
事前にどちらの書類が必要か分からない場合は、「戸籍謄本」を取得しておくことをお勧めします。
戸籍の取得方法
①申請先
被相続人の本籍にある市区町村役場の住民記録担当課(市民課、区民課など)になります。市区町村によっては、支所や自動交付機、コンビニで取得できる場合もあります。
また、郵送による申請も可能です。この場合、手数料は郵便局の為替窓口で購入する「定額小為替証書」を同封することにより支払い、返信用封筒を同封して返送をしてもらいます。
②戸籍の主な種類
名 称 | 内 容 |
---|---|
戸籍全部事項証明書「戸籍謄本」 | 戸籍に記載されている全部の者を証明 |
戸籍個人事項証明書「戸籍抄本」 | 戸籍内の一部の者を証明 |
戸籍一部事項証明書 | 戸籍内の一部事項を証明 |
除籍全部事項証明書「除籍謄本」 | 戸籍に記載されている全部の者が 除籍されていることを証明 |
除籍個人事項証明書「除籍抄本」 | 除籍内の一部の者を証明 |
除籍一部事項証明書 | 除籍内の一部の事項を証明 |
改製原戸籍謄本 | 編成様式が改められる前の戸籍内の 全部の者を証明 |
戸籍の附票 | 戸籍が編成されてからの住民登録の 履歴を証明 |
※謄本と抄本
「謄本」とは原本の写本、つまり原本の内容をそのまま全部写し取ったものであるのに対し、「抄本」は、原本の内容を抜き書きしたもの、つまり一部抜粋したものをいいます。相続税の申告においては、「戸籍謄本」が必要となります。
※改正原戸籍
改正原戸籍とは、戸籍法の改正によって新しく編成した場合における、編成前の戸籍をいいます。戸籍をたどる場合は改正前の戸籍である改正原戸籍を取得する必要があります。
③戸籍のたどり方
相続税の申告において戸籍謄本が必要な理由は、相続人の確定をするためであり、被相続人の生まれたときから死亡までの全期間の戸籍の取得が必要となります。戸籍謄本は何度も法改正が繰り返されていますが、改製前の情報は特定の内容しか記載されず、また、結婚等によってい新しい戸籍が作られた場合も同様で、以前の内容すべてが記載されないので、出生まで遡って連続する戸籍謄本を確認する必要があるのです。
法定相続情報一覧図
戸籍謄本や除籍謄本など、相続手続きの際にはさまざまな種類の戸籍が 必要になります。相続人の戸籍も合わせると膨大な量になることもありますが、平成29年に制定された法定相続情報証明制度を利用すると、戸籍収集の負担も軽減されます。
法定相続情報証明制度とは、戸籍や除籍謄本をもとに作成した法定相続情報一覧図を法務局へ提出し、認証されると5年間は一覧図の写しが無料交付される制度です。預貯金口座の相続手続きにも使えるので、一度作成しておけば様々な相続手続きはかなり楽になります。
法定相続情報一覧図には、図形式と列挙式の2種類があります。図形式は家系図を作成するようなイメージで、列挙式は一覧表のようなイメージです。様式は法務局のホームページからダウンロードできるので、様式を確認しておくと良いでしょう。