遺言書変更の手続きとそのポイント

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遺言書の変更のポイント:一番新しく作成されたものが有効

元気なうちに遺言書を作っておこうと、過去に遺言書を作成された方もいらっしゃることかと思います。しかし、時間が経てばご自身を取り巻く環境も変わりますし、状況も変われば考えも変わっていくことが自然です。

特に、

  • ご自身の財産額が大きく増えた・減った機会があった。
  • ご自身の介護問題などで特定の親族に助けてもらった恩が出来た。
  • 新しく子供・孫などが生まれた、相続予定人だった者が亡くなった

など、こういったケースが起こった場合は当初考えていた相続財産の配分を考え直すことが必要になるかと思います。

それでは、昔、作成した遺言書がある場合、遺言書の内容を変更したいときはどのような手続きを取るのでしょうか。
結論より申し上げると、“新しく遺言書を作成すればよい”ということです。

遺言書を撤回・無かったことにしたいなら、過去の遺言書を撤回したい旨の遺言書を作成します。遺産分割の配分などを変更したいなら、単にその新しい希望通りの内容の遺言書を新しく作成します。

遺言書に日付を記載する理由

遺言書は一番新しく作成されたものが有効となります。

そのため、相続発生時点で有効となる遺言書はどれなのか、見分けるためにも日付はしっかり記載しましょう。

遺言書の作成形式は3形式ありますが、“自筆証書遺言”と“秘密証書遺言”による場合は自身で記載内容を考え、自筆を行いますので遺言書の効力を持たせるためにも注意する必要があります。

また、自筆を行う場合でも、法務局が適切な要件を満たすような遺言書の形式を示しておりますので、インターネット等で法務局ホームページを参照すると良いでしょう。それでもご自身で法的な効力がある遺言書を作成できるのか不安という方はひと手間かけて“公正証書遺言”により遺言書作成を行うと良いでしょう。

また、複数の遺言書がある場合の効力がある遺言書の判定の他、作成時点において遺言作成者が適切な判断能力があったかどうかの効力要件にも関わってきますので、日付の記載は必ずおこないましょう。

新しく作成する遺言書の形式

適切な内容の遺言書であれば、形式は何でも構いません。

過去に作成した遺言と同じ形式でなければならないということはありませんので、遺言書の効力要件を満たすよう作成しましょう。

また、過去に自筆証書遺言を作られた方について、もしも遺言書の内容の変更を考えられているのであれば、令和2年より法務局が自筆証書遺言向けに作成の様式・法務局保管のサービスを開始しておりますので活用できます。

遺言書を新しく作成したときのポイント

新しく遺言書を作成した場合でも、“適切な方法で作成した適切な内容の遺言書を、適切な方法で開封されること”に気を付ける必要があります。

作成方法は“自筆証書遺言”、“公正証書遺言”、“秘密証書遺言”の3形式のいずれかを決めます。遺言書の内容については“遺留分は残すよう気を付ける“というポイントがありますが詳しくは他述します。

遺言書を新しく作成する場合に、特に注意しなくてはならない点は「一番新しい遺言書が発見されるように段取りしておく」ことです。

遺言書を新しく作成した場合に考えられるのは、新しく作成した遺言書が発見されないことです。

公正証書遺言の形式によって作成し、公証役場に保管している遺言書は撤回の申し出が可能となっておりますので差し替えが出来ますが、問題となるのは自宅保管をするケースです。

昔に作成した遺言書があることを忘れたまま、もしくは、昔に作成した遺言書を保管したまま、新しい遺言書を重ねて保管してしまうことが考えられます。相続開始後に遺言書を発見した相続人の方が、最初に発見した古い遺言書1通だけと思いこんで、新しい遺言書が発見されないということが起こらないよう保管しましょう。

  1. 自宅保管をする場合は古いものは確実に捨てる
  2. もしも古いものを残すならば新しいものと同じ場所へ保管する
  3. 法務局・公証役場(あるいは信託銀行など)の保管サービスを利用する

以上の点が大切になります。

自宅保管をする場合は特に家庭裁判所へ提出し、家庭裁判所にて開封を行うという要件を満たす必要がありますので、遺言書があることすら知らなかった相続人の方が遺言書を発見したときに適切な対応をとることは難しいかと思われます。

ご自身の大事なご資産の最後の処分方法を決めるわけですから、ひと手間かけて法務局や公証役場などの公的サービスを利用することをお勧めします。

また、遺言書の内容変更にあたり、相続税の考慮は必ず必要となりますので、検討の入り口にまずは税理士に相談して頂けるとよいでしょう。

相続税の計算業務は税理士の専門業務となりますので、相続に接する機会も必然と多くなりますし、過去業務から得た経験からいろいろなアドバイスも期待できます。

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