相続税の申告・納付は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」となっています。
比較的長い期間があるように感じますが、被相続人が亡くなった心労もある中で葬儀の手続きや住居の身辺整理、さらには役所手続きなど立て込みます。相続人が現役で勤務されている場合、葬儀に続いて相続手続きのためにさらに休暇を取るということも難しいでしょう。
税の申告にあたっては、税の計算の基礎となる証明書類を揃える必要があります。
税申告では、「何を参照して=添付必要書類」、「どのように計算したか=申告書」という大別して2つの書類郡が必要になります。計算・申告書の作成は税理士の専門業務ですが、参照する必要書類の収集にあたっては、被相続人と周辺の方の個人情報も必要書類の内容に含まれてしまいます。個人情報保護の関係上、被相続人の関係者である相続人の方でしか取得できないものがほとんどですので人任せにはできません。
故人が保有していた資産が多岐にわたるほど必要な書類が多くなりますが、事前にどのような資産に対して何の書類が必要か理解していれば役所等の窓口へ二度伺うようなことは少なくできます。
税務申告以外の用事があった時に併せて税務申告に必要な書類も回収してしまうと二度手間もなくなりますので、どこで何の書類が手に入るのか、しっかり確認しておきましょう。
必ず必要となる書類(取得できる場所)
(1)被相続人の一生涯分の戸籍謄本、または、全部事項証明書(市区町村役場)
(2)相続人全員分の戸籍謄本、または、全部事項証明書(市区町村役場)
(3)相続人全員分のマイナンバーがわかる書類
※マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー付き住民票(市区町村役場)
相続資産により必要となる基本的な書類
不動産(土地、建物) | ①固定資産税名寄(なよせ)帳兼課税台帳(市区町村役場、23区内は都税事務所) ②固定資産税評価証明書(市区町村役場、23区内は都税事務所) ③登記事項証明書(法務局) |
上場株式 | 残高証明書(口座がある証券会社・信託銀行) |
非上場株式 | ①直近3期分の決算書(会社へ問い合わせ) ②株主名簿(会社へ問い合わせ) ③法人所有の土地や有価証券がわかるもの ※固定資産税課税台帳や残高証明書など、必要に応じ(会社問い合わせ) |
預金 | 残高証明書(口座がある銀行) |
保険 | ①保険金支払通知書 ※別名:支払案内書、支払証明書、支払明細書など (郵送にて、または保険会社問い合わせ) ②保険証券※別名:保険証書(保険契約者が保管、または保険会社問い合わせ) |
借入 | 借入残高証明書(借入先機関より毎年郵送) |
死亡退職金 | 支払通知書 ※会社により異なる(勤務先など) |
葬儀費用 | 葬儀に関する費用の領収書(葬儀先) |
その他 | ①遺言書写し ※ある場合 ②遺産分割協議書写し ※相続人が複数の場合は必要 ③相続人全員の印鑑証明書※遺産分割協議書がある場合、押印したもの (市区町村役場) ④各種税制特例を受ける場合(税理士問い合わせの上、収集) |
まとめ
ひと通り網羅して挙げてきましたが、これで十分とは言えないこともあります。前述した通り、申告にあたって必要な書類は、「税金計算・申告書の作成は何に基づいているのか」という証拠を税務署へ示すためのものになります。
そのため、各税務署の判断によっては証明力不十分として追加の書類が必要となることもありますので、専門家である税理士に相談・確認しながら進めていくことが結果的に効率的な相続税申告となるでしょう。
手順としては、
①遺言書を探す(故人が保有していた資産が一度に把握できます)
②遺言書が無ければ、まず個人の保有していた資産をすべて把握する
③税理士に相談して必要書類を確認
④収集
税務申告の知識がない場合には、この方法で二度手間を少なくできると考えられます。また、相続税の計算にあたって、一定の土地の評価額を80%減らすことが出来たり、経営承継に係る株式の相続については当該株式に係る相続税の支払いが猶予・免除されたりと、場合によって利用できる特例が存在する可能性もあります。特例に関しましては、専門度が高く一般の方に網羅することはかなり困難ですので、こういった特例も漏らさず利用できるよう、税理士専門家に相談してから必要書類を収集することが良いでしょう。
加えて、相続資産の配分を決定後、実際に承継するにあたり、例えば上場株式ですと証券口座を持っていない方は証券口座の開設が必要となったりします。現金預金以外の資産を承継する場合に、その相続資産を売却して相続税の支払いに充てようと考える場合、資産承継・売却手続きにて思わぬ時間が掛かることもありますので、申告納付期限10カ月では早めの行動を心掛けましょう。