遺言執行者とは?役割・業務の流れ

遺言書を作成する場合、遺言書の中で遺言執行者を指定する場合があります。
どのような立場?また資格など必要?ここでは遺言執行者について説明します。

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遺言執行者とはどのような人?

遺言執行者とは相続の現場において、どのような役回りをするのでしょうか?
日本では自分で所有している財産について、自分自身の希望通り遺産分割を指定する事ができます。その分割方法を指定した内容を記載したものが遺言です。

遺言執行者がいなかった場合に起こりえる問題はどのようなものがあるでしょうか?
例えば、何かのきっかけで自身に不利な内容の遺言書であった場合、その相続人が遺言書を隠す、あるいは破棄するという事が考えられます。
また、強い立場で遺言を実行する者がいない場合、相続人間の発言力の強い人が弱い者に圧力をかけ自身に有利に相続を行うという事も考えられます。
このような事が起きないよう相続の現場の陣頭指揮を執るのが遺言執行者になります。

また遺言執行者になった者は、被相続人の意志を実行するために指定された者、又は法人で民法により権利を保障されています。
遺言執行者が遺言執行として行った事は、相続人に法的な効力が生じます。
遺言実行者の目的は、あくまで亡くなった方の生前の希望を実現する事です。
そのため、特定の相続人の見方をすることは禁じられています。

遺言執行者の目的は?

亡くなった方が思いを込めて作成した遺言書も、その思い通りに相続が行わなければ意味の無いものになってしまいます。そこで、その遺言書に書かれている事を忠実に実行するのが遺言執行者です。
特定の相続人の思惑や圧力などに左右されず、また改ざん、盗難、紛失などが無いよう管理する役割も期待されています。
残された遺族は、悲しみに暮れる間もなくお通夜、告別式を取り行います。悲しみの中、大きなストレスを抱えている状況です。
その際、必要な書類の取り寄せ、銀行や公的機関の手続きを進める、また必要に応じて司法書士や税理士とともに手続きを進める遺言執行人は非常にありがたい存在になるでしょう。
また、令和元年の民法改正により、遺言執行者の立ち位置は若干変わっています。
改正前までは、相続人の代理人という側面が強く、本来亡くなった方の思いを実現する立場であるにも関わらず、希望通りの遺言ではない相続人との対立から遺言執行者の業務を実行できない場合がありました。改正された民法では、遺言執行者の権限を明確化し、被相続人の意向がしっかり実現できるように改善されました。
少子高齢化と、相続税の基礎控除の縮小、今後予想される相続税の改正などを見据え、ますます遺言執行者の重要性は大きくなると言えるでしょう。

遺言執行者に資格は必要?

遺言執行者になるには、弁護士や司法書士や行政書士など特別の資格は必要でしょうか?
答えは必要なしです。特別な資格が無くても遺言執行者になることができます。
ただし未成年者と破産者だけは遺言執行者になれないと定められています。
遺言執行者は、亡くなった方の最後の意志を実行する立場なので、やはり未成年者や破産者はふさわしくないとされています。
遺言執行者になるには、どのようにしたら良いのでしょうか?
良くある3つケースを紹介します。

(1)遺言によって遺言執行者が指定されている場合
これは遺言を作る人(先々被相続人になる立場の人)が遺言執行者になってもらいたい人に了承を得て、遺言書にその人を遺言執行者に指定する旨記載することになります。

(2)「遺言執行者」を指定する場合
これは遺言を作成するときに、遺言執行者に適した人が周囲にいない場合に検討することになります。

(3)家庭裁判所による遺言執行者を専任する場合
これは遺言執行者が指定されていない時または、遺言執行者が亡くなった時に相続人が家庭裁判所に申し立てることが出来ます。

遺言執行者のみが執行できること

遺言執行者のみが執行できることがあります。
それは廃除といって相続権を奪う法律行為です。廃除の取り消しも遺言執行者が行う事ができます。
また遺言による認知についても遺言書の記載にもとづいて遺言執行者が行う事が出来ます。

廃除については、相続権を奪う行為になりますので、民法では廃除が可能となる事由を列挙しています。

・遺言者を虐待した(何度も暴力を振るう、遺棄するなど)
・遺言者に重大な侮辱を加えた(体が弱った遺言者に暴言を吐き、侮辱したなど)
・その他著しい非行(財産の強奪、多重ローンで遺言者に肩代わりしてもらった、遺言者をかえりみず愛人と駆け落ち、など)

廃除は遺言者が生前に行う事もできますし、死後遺言執行者が行う事も出来ます。

◆廃除の取り消し
廃除の取り消しとは、一度行った廃除を無かったことにするものです。
理由がなくてもいつでも自由にすることができます。

◆認知について
認知については、遺言者の生前に行う事ができますが、遺言書で行う事も出来ます。
この行為についても遺言書の記載に基づき遺言執行者が実施することになります。

参照資料:『相続コンサルタントのための はじめての遺言執行』(相続コンサルタント 一橋香織、弁護士 木野綾子共著) 日本法令社

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