通夜や葬儀の際に参列者から香典を受け取り、遺族からは香典返しを渡すのが一般的ですが、香典は現金でのやり取りが多いため、相続税の対象となるかどうか判断が問題となります。
香典は相続税の対象に含まれない
相続財産とは、被相続人が亡くなった時点での保有資産や債務をいいます。
したがって、香典は亡くなった人が受け取るものではなく、その遺族が被相続人の死後に受け取ったものになるため、香典は相続財産には含まれません。
ただし、高額な金額の香典を受け取った場合、相続税以外の税金の対象となる可能性があります。それは「所得税」と「贈与税」です。
所得税の対象となる場合 |
高額の香典を支払ったのが法人の場合、受け取った人に「所得税」が発生します(一時所得) |
贈与税の対象となる場合 |
高額の香典を支払ったのが個人の場合、受け取った人に「贈与税」が発生します |
ただし、所得税や贈与税の課税の対象となる香典の金額について、明確な基準があるわけではなく、あくまで社会通念上不相応に高額と認められる場合課税の対象となります。
また、一時所得として所得税が課税された場合であっても、50万円の特別控除額があるため、50万円を超えなければ税額は発生しません。
贈与税についても同様に110万円の基礎控除があるため、110万円を超えなければ税金は発生しないことになります。
葬儀費用は相続税から控除できる
相続税を計算する際、財産から引くことのできるものとして、「葬儀費用」が挙げられます。しかし、葬儀に関わるすべての費用を控除することはできません。ここでは相続税の計算で控除できる葬儀費用のポイントについてまとめます。
1. 領収書等の保管が必要 |
葬儀費用を控除するには、領収書を保管しておく必要があります。しかし、葬儀費用の中には領収書が発行されないものもあります。その場合は支払った日にち、金額、相手先を記したメモやノートを残しましょう。 |
2.2回目の葬儀費用も控除対象 |
葬儀を住所地、出生地で2回行う場合があります。この場合、どちらの葬儀費用も相続税の控除対象となります。また、葬儀に参列できない方を集めて行う「偲ぶ会」に関する費用についても、控除対象となる可能性があります。 |
3. 遠方親族への費用も控除対象 |
遠方に親族が住んでいる場合、交通費や宿泊費がかかることがあります。この場合この費用が社会通念上妥当な金額である場合、控除対象となる場合があります。 |
4. 社葬は控除対象外 |
会社が葬儀費用を負担する場合、相続税の控除対象外となります。この場合社葬費用については会社の経費として控除されることになります。 |
葬儀費用に含まれる費用
一般的に葬儀会社に直接支払った費用が葬儀費用となります。そのほか読経料・戒名料やお布施、お寺や神社などへの支払い、火葬を行う際にかかった費用や埋葬・納骨にかかった費用についても葬儀費用の対象となります。遺体や遺骨の運搬費用についても同様です。
通夜や葬儀に参列した方に対し、香典をいただいたかどうかに関わらず参列した方にお品を渡することを「会葬御礼」といいます。この「会葬御礼」については葬儀費用に含まれることになります。
相続税法基本通達13-4(葬式費用) |
(1)葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用) (2)葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用 (3)(1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの (4)死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用 | 法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。
葬儀費用に含まれない費用
通夜や葬儀に参列した方に対し、香典のお礼として返礼品をわたすことを「香典返し」といいます。この「香典返し」については葬儀費用とはなりません。
また、墓碑及び墓地、位牌の購入費並びに借上費用についても葬儀費用となりません。墓地や仏具が相続税の対象とならないため、「香典」と「香典返し」と同じ考え方となります。
初七日法要や四十九日法要にかかる費用については法会(ほうえ)にあたり、葬儀費用には含まれません。供養の費用や回数は宗教上の違いによって異なるため、葬儀費用として相続財産から控除してしまうと一定の宗教だけ有利に扱うことになってしまうため、葬儀費用として取り扱わないものと定めています。
相続税法基本通達13-5(葬式費用でないもの) |
(1)香典返戻費用 (2)墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借上料 (3)法会に要する費用 (4)医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用 | 次に掲げるような費用は、葬儀費用として取り扱わないものとする。