建物のリフォームは相続対策となりますか?

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額に1.0を乗じて計算します。したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。
固定資産税評価額は、おおむね時価の70%となりますので、現預金で所有するよりも、建物を建てたほうが相続税評価額を下げる事になります。
建物のリフォームを行った場合も同様に、現預金をリフォームの資金に使う事で、相続税評価額を下げる事ができることもあります。リフォームの内容により取り扱いが変わりますので、注意点を解説していきます。

目次

リフォームによる節税ポイント

床面積を増やすなどのリフォームをした場合には、増築した部分の不動産登記をすることで、固定資産税評価額が増加します。他、経年劣化した部分のリフォーム、内装設備などのリフォームについては、固定資産税評価額は変更されず、そのまま据え置きになるのが通常です。
増築については不動産登記をしていなくても、お役所が航空写真や町の巡回で実地調査を行い、増築が確認できた家屋については、固定資産税評価額の改訂がある場合があります。建物の形状や外観が変わった場合には、お役所は目を付けています。
リフォームの内容により、外観の見た目が変わらないリフォームの場合には、固定資産税評価額は変わらないという事が言えます。以前は、この方法により節税効果があるとされていました。
しかし、平成25年の税制改正後については、大規模なリフォームをした時は、固定資産材評価額が改訂されていなくても、そのリフォーム部分の評価額を加算して物件の評価をすることとされました。そのためリフォームの内容について評価額の対象になるのかどうかを見極める必要があります。

大規模なリフォーム(増改築)の基準

具体的にどういったものを想定しているのかは、一般的には法人税、所得税上の資本的支出の判断が目安になると考えられています。

①資本的支出とは?
・建物などの使用可能年数の延長が想定される支出
・資産価値が増加すると考えられる支出…建替、新設備の導入、間取り変更など、

②収益的支出(修繕費)
・維持管理や原状回復のために要した費用…原状回復のための外壁塗装、経年劣化した設備の交換、壊れたカ所の補修など

家屋と構造上一体の設備(電気設備・ガス設備・衛生設備など)は、家屋の価額に含めて評価します。
浴室工事や台所工事などで経年劣化した設備の修繕については、固定資産税を増額する事にはなりません。

大規模なリフォーム部分の相続税評価額計算方法

計算方法としては、2通りあります。

①当該増改築などに係る家屋と類似したものの固定資産税評価額を基礎として、経過年数などを調整した価額
②上記が不明な場合は、(再建築価額-償却費相当額) × 70%
償却費相当額の計算方法
リフォーム費用 × 90% × (リフォーム日 ⇒ 死亡日までの経過年数) / 耐用年数

固定資産税評価額が改訂されていなくても、70%部分は相続税評価に反映しすることになります。それでも、30%評価はさがるので、「現金」で保有するよりは節税になります。

2世帯住宅での注意点

リフォーム部分の所有権は建物所有者に帰属します。
従って、リフォーム代を負担した人が建物所有者以外の場合には、リフォーム部分については、資金を負担した人から建物所有者への贈与と取り扱われます。
2世帯住宅で親がリフォーム代を全額負担した場合に、子供の所有権部分に対するリフォーム代については、原則通り贈与税の対象になります。
ただし、リフォーム代でも、住宅取得など資金贈与の特例要件を満たした場合には、例外的に贈与税がかからないようになっています。
逆もしかりで、子供が全額リフォーム代を負担した場合にも、親の所有権部分に対するリフォーム代については、原則通り贈与税の対象になります。なお、この子供から親への贈与のケースでは住宅取得資金贈与は使えません。

安易に考えずに、贈与税を発生させないようにすることを考えておくべきです。

まとめ

以前は、大規模なリフォームであっても、相続財産として改めて評価することはなかったため、非常に有効性の高い節税対策とされてきました。しかし現行の法律の下では、小規模なリフォームであれば有効ですが、大規模なリフォームであると30%の評価減となり、以前よりは効果が少ない事になります。
相続が発生した場合には、このリフォームについてきちんと申告しないと、後で税務調査などにより申告漏れが指摘された場合には、加算税の対象となりますので、申告漏れのないように記録を残しておく必要があります。
税務調査では、大きい資金が動いたところを重点的にチェックします。リフォームは見つかりやすい事のひとつですので、十分に注意をして対策をする必要があります。

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