相続手続きにおいて、亡くなった方の謄本等の書類を各種窓口へ何度も出しなおす必要がありますが、近年では相続に関する話題が増えており、非常に身近な問題です。この制度は複雑な登記手続きを簡易化させるもので、今後ニーズが高まると考えられます。
制度の背景
この制度の背景として、不動産登記記録の記載によっても所有者が判明しない不動産の増加という問題があります。
地価の上昇が続き、不動産の資産価値に関心が高く、また地縁・血縁関係が強かった時代は、相続が発生すれば相続人名義に相続登記がされることから、不動産の所有者が不明となることは比較的少なかったと思われます。
しかし、現在は不動産に対する関心は多様化し、管理や課税に対する負担感を抱くことにより、遺産分割や相続登記がなされずに放置されるケースが増加しました。また、遺産分割や相続登記がなされないうちに相続人にさらに相続が発生し、それが何代にもわたることにより、解決が一層難しくなっているケースも増えました。
制度の概要
この制度は、法務局が亡くなられた方と相続人の相続関係を証明する制度です。法務局に相続関係を一覧に表した戸籍謄本と法定相続情報一覧図を提出することにより、登記官が認証した「法定相続情報一覧図の写し」が発行されます。相続手続きをするときに、この写しを利用することで、戸籍謄本等を何度も出し直す必要がなくなります。名義変更や解約の手続きが必要な相続財産が複数ある人には特にメリットが大きいものだと考えられます。
<この制度を利用できる相続手続き>
①不動産の名義変更⇒相続登記
②銀行・ゆうちょ銀行の口座解約・名義変更
③有価証券等の名義変更
④遺族・未支給年金,死亡一時金等の請求手続き
⑤死亡保険金の請求
手続きの流れ
まずは必要書類の収集をして法定相続情報一覧図の作成を行い、その後に申出書の記入と登記所への申し出を行います。必要書類については、必須なものとケースバイケースのものがあります。
<必須となる書類>
・被相続人の戸除籍謄本(出生から死亡まで)
・ 〃 住民票の除票
・相続人全員分の戸籍謄妙本⇒被相続人死亡後の証明日のもの
・申出人(相続人の代表で手続きを進める方)の本人確認書類
<必要となる場合がある書類>
・各相続人の住民票の写し⇒一覧図に住所を記載する場合
・委任による代理人が申し出手続きをする場合⇒委任状、申出人と代理人が親族関係にあることが分か る書類(親族)、資格者代理人団体所定の身分証明書の写し(資格者代理人が代理)
・被相続人の戸籍の附票⇒上記の書類を取得できない場合
上記の書類が揃ったら下記の様な法定相続情報一覧図の作成に進みます。
最後に申出書を作成し、法務局に戸籍一式、被相続人の住民票の除票、法定相続情報一覧図、申出人の本人確認資料、法定相続情報一覧図へ相続人の住所を記載する場合には各相続人の住民票の写し、代理人が申出を行う場合には委任状とともに提出します。