相続時精算課税制度のメリットとデメリット

相続時精算課税制度には、どのようなメリット、デメリットがあるのか確認しましょう。

目次

メリットについて

(1)2,500万円までは贈与税がかからない
一番のメリットは、最大2,500万円までの贈与であれば、贈与税がかからない(非課税)ということです。
ただし、最大2,500万円は贈与者が死亡するまでに贈与した「累計の贈与額」となります。つまり一度に2,500万円の贈与も年をまたいで複数回にわたって合計2,500万円の贈与もできます。

(2)超過した分の贈与税の税率が一律20%
相続時精算課税制度を適用させた贈与財産が合計2,500万円を超えた場合、超過分の財産については贈与税の税率が一律で20%となります。 超過分の財産の贈与税の税率は、暦年課税の税率と比べるとはるかに低くなっています。
通常、暦年課税で一度に3,000万円を贈与すれば税率は45%です。
相続時精算課税制度だと税率は20%となり税率が大きく異なります。

(3)相続の争いを防げる
相続人同士で相続財産の分割についてよくトラブルになりがちです。
相続時精算課税制度を適用させて生前贈与をすることにより、贈与者の相続発生時における親族間での相続争いを防ぐことができるかと思います。 特に不動産などは遺産分割しづらいため、「相続させたい財産」を「相続させたい相手」に生前贈与しておくことで、遺された相続人同士の相続争いを防ぐことができるかと思います。

(4)財産を早く贈与できる
相続時精算課税制度を選択した場合、元々相続発生時に相続人である子や孫に相続する財産を、子や孫が財産を必要としているタイミングにて受け取れ、有効に活用できることが可能となります。

(5)時価主義をうまく活用する
相続時精算課税制度の持ち戻しの際には、「時価主義」があります。
時価主義とは、例えば有価証券を時価500円のときに贈与した場合で贈与者が亡くなり相続が発生した時にその有価証券の時価が10万円に高騰していたとしても、反対に1円に急落していたとしても、評価する価格は贈与時の時価500円で評価されます。これを「時価主義」といいます。
この時価の差を利用し、長期的にみて時価が上がることが予想される財産を相続時精算課税制度にて贈与しておけば、相続財産を実質的に減らすことになり相続税負担を抑えることになります。
ただし、相続発生時に贈与された財産の時価が下がっていた場合は、逆に相続税が高くなってしまうというリスクが生じますので注意が必要です。

デメリットについて

(1)提出後の変更ができなく今後同じ贈与者から暦年課税が使えない
一番のデメリットとして「相続時精算課税制度選択届出書」を税務署に提出すると、同じ贈与者からの暦年課税の基礎控除額(毎年110万円)が使えなくなってしまい、暦年課税との併用も、変更も撤回もできません。
ただし、他の贈与者からの贈与については暦年課税制度を利用することは可能なので「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」のどちらが得なのか、比較することが重要です。

(2)贈与がある場合に毎回申告の手間がかかってしまう
相続時精算課税制度を選択した際には、必ず「贈与税の申告書」や「相続時精算課税制度選択届出書」などの必要書類を税務署に提出して申告する義務が発生します。
また、相続時精算課税制度は贈与者が亡くなるまで継続となりますので、2,500万円を超えた分の贈与についても、超えていなくても金額に関係なく毎回申告が必要となり手間がかかります。

(3)相続時に相続税が発生することがある
こちらは制度上仕方がないことですが、将来的な納税額が増加することも考えられます。
相続時精算課税制度はで最大2,500万円までは贈与税が非課税となりますが、贈与者の相続発生時には、相続税額を計算する際、相続時精算課税制度を選択した贈与財産(2,500万円まで)を相続財産に加算して計算する必要があります。
相続時精算課税制度を選択した贈与財産を相続財産に加算した総額が、相続税の基礎控除額を超える場合には相続税が課税されることになります。
また、受贈者が孫で相続税が課税される場合(相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族、および配偶者以外の人である場合)には相続税の2割加算の対象となります(代襲相続によって孫が法定相続人になる場合は除く)。

(4)小規模宅地等の特例が使えない
相続時精算課税制度を選択して住宅などの宅地等(土地や敷地権)を贈与した場合、その宅地等は受贈者の財産となるため、贈与者の相続発生時に小規模宅地等の特例を使えなくなります。

※小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす状況で宅地等を相続した場合、その宅地等の相続税評価額が最大80%減額される特例です。

(5)不動産の所有権移転に関する費用がかかる
不動産を生前に贈与した場合、「登録免許税」や「不動産取得税」などの費用が増えます。また、相続と贈与で登録免許税率が異なり相続で不動産を取得した場合、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)のみですが贈与の場合2%となり負担が増します。
そのため相続で不動産を取得した場合と比較すると、生前贈与で不動産を取得した場合多くの費用負担がかかりデメリットとなります。

相続時精算課税制度を使用した方がいいケース

(1)相続税がかからない(相続財産が基礎控除の範囲内)
贈与者の相続発生時の相続財産の総額、つまり「相続時精算課税制度を選択した贈与財産+その他の相続財産」の総額が、相続税の基礎控除の範囲内の人は、相続時精算課税制度を使うべきです。
相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

例)3人家族で父の相続が発生した場合
法定相続人は2人(配偶者と子供1人)となり、相続税の基礎控除額は4,200万円です。

この場合「相続時精算課税制度の贈与財産+その他の相続財産」の合計が4,200万円を下回ると予想されるケースでは、相続時精算課税制度を選択して生前贈与をしても、将来的に基礎控除額に係る法改正が行われなければ、相続税はかからない、課税されません。

(2)年間110万円以上の贈与をしている
年間で110万円以上の贈与をしている人は相続時精算課税制度の選択を検討しましょう。
年間110万円までの贈与は暦年課税にて贈与税が原則非課税となります。しかし、贈与額が多くなれば贈与税率も高くなり贈与税の納税額も大きくなってしまいます。
そのため相続時精算課税制度を活用したほうがお得になることもあります。
ただし、相続時精算課税制度を選択すると暦年課税を利用できなくなるため、どちらが得なのか比較検討が必要です。

(3)贈与時において財産の評価額が下がっている
贈与時に評価額が下がっている財産がある人は、相続時精算課税制度の選択を検討されると良いでしょう。
さきほどの例と一緒で、有価証券などで、購入当時より評価額が下がっているあ場合には相続時精算課税制度を選択し生前贈与すれば、相続税の計算時には下がった時価での評価額となりますので相続税負担が下がるケースとなります。
ただし、贈与者の相続発生時により評価額が下がっていれば、相続税額が逆に高くなるのでご注意ください。(相続発生時より評価額が上がってしまうことも)

(4)今後価値が上がると予想される財産がある人
相続時精算課税制度では、贈与した際の時価にて財産評価致します。
その贈与者が亡くなった際の評価額も贈与時の時価となりますので、今後価値が上がると予想される財産がある場合には、お得となりますので、相続時精算課税制度の選択を検討されると良いでしょう。

例)
・有価証券(今後値上がりが期待される)
・土地(開発計画の予定があるなど)

(5)収益物件(賃貸マンションや賃貸アパートなど)を所有している
賃貸マンションや賃貸アパートなどの収益物件を所有している人も、相続時精算課税制度を選択すれば節税に繋がる可能性があるため、制度の選択を検討してみましょう。
相続税の税率は、課税価格が高くなれば税率もアップする超過累進課税です。相続税の計算時には、収益物件そのものの評価額だけではなく、毎月得ている収益(家賃収入)も相続財産として算入するため、納税する相続税額が数百万円単位で異なる可能性があるのです。
ただし、賃貸マンションなどは「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」に該当するため、贈与者の相続発生時に要件さえ満たせば、限度面積200㎡までの宅地等の評価額を50%減額できます。
小規模宅地等の特例の限度面積を超えて賃貸マンションや賃貸アパートがある人や、毎月得ている収益が大きい人は、相続時精算課税制度を選択するか否かをシミュレーションしてみましょう。

(6)相続トラブルの可能性がある
贈与者の相続が発生したとき、遺産の分割方法で相続人同士で争う可能性が少しでもある人は、相続時精算課税制度を選択すれば、争続トラブルを回避できる場合があります。
例えば、被相続人(亡くなった方)が父で、相続人が子供2人だけ、そのうち一人が父と同居しており、父が亡くなった後も引き続き自宅(父の住居)に住み続けています。相続財産は預貯金100万円、自宅1,500万円とします。
2人の子供が法定相続分として2分の1ずつ相続すると800万円(相続財産1,600万円×1/2)ずつ相続となりますが、現金(預貯金)が100万円のみで、あとは不動産のため、遺産分割の話し合いがうまくまとまらない可能性があります。
不動産の持ち分を2分の1ずつ共有することでまとまれば問題ありませんが、同居していない相続人から相続分を主張された場合に、もう一人には不足金額を支払う必要が生じます。そのため自宅を売却、現金化して不足金額を作ると同居していた相続人は家がなくなってしまいます。
そのような相続人同士のトラブルが予想される場合に、相続時精算課税制度を使い贈与することで解決するケースがあります。
相続財産を1,600万円と仮定した場合、相続税の基礎控除(4,200万円※3,000万円+600万円×2人)のため相続税の負担は発生しません。
相続財産が基礎控除を超える場合には相続税が発生しますが、上記リスクを考慮しても選択するメリットは大きいと思います。
また、今回のケースのように父と相続人の一人が同居している場合には、相続時精算課税制度ではなく、「小規模宅地等の特例」を適用させたほうが有利なることがありますので税理士にご相談ください。

目次
TOP
目次
閉じる