亡くなった家族が銀行預金を持っていた場合には、銀行預金の相続が発生します。預金の相続の方法は、相続の形態によっていろいろなパターンがあります。そして、故人名義のものばかりではなく、家族名義の銀行預金があった場合に、それが故人の財産としてみなされる場合があります。今回は、銀行預金の相続について詳しく解説します。
銀行預金の遺産分割について
銀行預金の遺産分割の仕方は、相続の形態によって異なります。まず、相続人が一人(単独相続)の場合は、分割の必要はありません。
相続人が複数人(共同相続)の場合は、法定相続分での分割のほかに、遺言がある場合、遺産分割協議をする場合、遺産分割調停や審判による場合などがあります。
遺言があっても、その遺言が無効な遺言の場合は、遺産分割協議を行う場合があります。
銀行預金の相続手続きと引き出しについて
銀行預金の相続手続きでまず必要なことは、亡くなられた方(被相続人)の銀行預金口座を調べることです。遺言がある場合は財産目録が添付されている場合があります。また、銀行預金の残高証明書を取得することで、被相続人の銀行預金口座取引内容を把握することができます。
銀行預金の相続手続きは、相続人が一人(単独相続)の場合は一人での手続きですが、相続人が複数人(共同相続)の場合は、すべての相続人での手続きが必要となります。遺言がある場合には受遺者(遺言により遺産を受け取る人)が、遺言執行者が決められている場合は遺言執行者が手続きをする場合もあります。
銀行預金を相続する方法は、被相続人の預金口座の名義を相続人に変更して存続させる方法、預金口座を解約してから相続人の口座に振り込む方法などがあります。
共同相続の場合は、代表相続人の口座に振り込まれたあと、他の各相続人に分配します。※手続きの方法は銀行によって異なります。
相続預金の払戻し制度
被相続人の銀行預金口座は被相続人が死亡したことを銀行が知った時から凍結(預金取引停止)となりますので、相続手続きが終わるまでは相続人が払い戻すことは原則できませんが、2019年7月からは、一定の金額の払い戻しが認められることになりました(相続預金の払戻し制度)。
相続預金の払戻しは、家庭裁判所の判断を経ずに払い戻す場合と、家庭裁判所の判断により払い戻す場合(遺産分割調停や審判による場合)があります。
家庭裁判所の判断を経ずに払い戻す場合は
相続が開始された時の預貯金額×払戻しをする相続人の法定相続分×3分の1(上限150万円)となります。
相続預金の払い戻し手続きの方法は、銀行によって異なりますので、事前に確認をしてから手続きをしたほうがよいでしょう。
銀行預金の相続税評価について
銀行預金を相続した場合には相続税を申告することになります。ただし、相続した財産が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。
銀行預金については、相続が発生した日(預貯金の名義人が亡くなった日)の預金残高で評価されます。定期預金については既経過利息(相続が発生した日に解約をした場合の定期預金利息から所得税を源泉徴収した額)を含みます。
妻名義の預金がある場合(名義預金)
夫が亡くなったときに、妻名義の預金があるときは、名義預金となる場合があります。
名義預金とは、亡くなった人以外の名義の預金が、実質亡くなった人の預金とみなされる預金のことです。妻だけではなく子どもや孫も該当することがあります。
名義預金となる場合ですが、夫の財産から妻の名義の口座に預金していた(いわゆるへそくりなども該当することがあります)、妻がその預金があることを知らなかった、妻がその預金を管理していなかった、などが該当します。
妻名義の預金が名義預金とされた場合は、夫の財産を妻が相続したとみなされて、相続税の対象となります。
預金がある場合の遺産分割協議書の書き方
預金がある場合の遺産分割協議書の書き方ですが、預金取引の内容や、相続の形態によりいろいろなパターンがあります。
遺産分割協議書には決まった書式がありませんので、相続人が手書きやパソコンなどで作成する必要があります。
遺産分割協議書を作成する際には、どの相続人がどんな財産を取得するのかをわかりやすく明確にしておくことが必要です。
まずは、被相続人の情報(氏名、住所、生年月日、本籍、死亡日など)、遺産分割協議が成立したことを表す文面、被相続人の財産の内容、財産の分割方法、そのほか特別に記載する事項、遺産分割協議が成立した年月日、各相続人の氏名住所などを記載します。
被相続人の預金については、取引銀行名、支店名、預金種目、口座番号、預金残高を記載します。預金利息などがある場合は、その旨を記載します。
預金を共同相続人で分割する場合は、各相続人の取得割合を記載します。
また、被相続人の預金口座を解約または名義変更した後に代表相続人の預金口座に振り込まれる場合はその旨と、代表相続人に振り込まれた後に共同相続人に分配する方法を記載します。 なお、共同相続の場合は、共同相続人すべての相続人の署名と住所、実印の押印が必要です。