不動産相続の手続き一覧
①法定相続人を確定する(相続開始~1ヶ月目)
ご親族が亡くなった場合、まずは健康保険や年金の資格喪失届の提出、自治体への死亡届の提出、年金受給の停止手続き等、何かと慌ただしく行う手続きが連続します。一通りの手続きが終わった後は、被相続人(亡くなった方)の財産の相続手続きに移行します。
そこで、まず最初に行うことは、法定相続人を確定させることです。法定相続人とは、被相続人の財産を相続する権利を持つ人のことを指します。被相続人が生前に作成した遺言書が無い場合は、法定相続人同士で話し合いをした上で遺産を分割することとなります。法定相続人が配偶者や子供のみの様な、身近な親族のみである場合は、話し合いは簡単にまとまると思われる方もいるかもしれません。しかし、前妻の子供がいる場合や隠し子がいる場合など、予期せぬ人物の登場により、争いに発展する可能性があります。前妻との子供や隠し子の有無等を確認するためには、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得し、誰が相続人であるかを最初に確認し、法定相続人を確定させる必要があります。
②遺言書があるかどうかを確認する(相続開始~1ヶ月目)
被相続人が作成した遺言書がある場合、遺産分割は原則として遺言書に従い行われます。遺言書が無い場合は、上述のように法定相続人の間で協議を行って遺産の分割方法を決めます。
遺言書の有無は、相続手続きにおいて非常に重要な確認事項になります。その為、遺言の有無は念入りに確認が必要となります。自宅に保管している場合もあれば、銀行の貸金庫の中にある場合もあります。近年では、法務局で補完することも可能となっていますし、公正証書遺言の場合は、公証役場に保管されているケースもあります。上記の場所は漏れなく確認することをお勧めします。
③相続財産(債務も含む)を確認する(相続開始~3ヶ月目)
法定相続人が確定し、遺言の有無も確認した後は、被相続人(亡くなった方)から相続する総財産(債務も含む)の確認に入ります。
被相続人の名義となっている預金口座、株や投資信託、国債といった金融資産、不動産や自動車、貴金属類等の財産が相続財産となります。また、財産と聞くとプラスのものを連想してしまいがちですが、負債も負の財産として相続対象の財産となります。
金融機関等からの直接の借入金や連帯保証している債務、税金・医療費の未払金などがある場合、このようなものが負の財産に該当します。
近年ではネット銀行等の普及により通帳等が無い場合も多いので、相続人が生前にエンディングノート等に財産をまとめておくと、相続時の確認に非常に役立ちます。
後述する相続放棄や限定承認の判断にも大きく影響してくるため、どのような財産や債務があるのか、内容確認は極力早い段階で行いましょう。
④相続放棄するかどうかの判断(相続開始~3ヶ月目)
③までの確認が概ね完了した時点で、各法定相続人がそれぞれ個別に、財産を相続放棄するのか、限定承認(プラスの財産のみを相続すること)するのか、ということを検討しなければならないことがあります。
相続放棄も限定承認も、相続開始後3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければ利用できないので注意が必要です。
相続開始からの3か月間は、あっという間に過ぎていってしまうので、③までの手続きを早めに行い、余裕を持って判断できるようにしなければなりません。
⑤準確定申告(相続開始~4か月目)
被相続人(亡くなった方)が自営業等の事業主であった場合や不動産所得を得ていた場合など、亡くなった年の分の確定申告と納税をする必要がある場合は、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、準確定申告の手続きを税務署宛にしなければなりません。この準確定申告は、相続開始から4か月以内に申告と納税を行う必要があります。
なお、被相続人が1カ所からの給与所得のみで金額が2,000万円以下や、年金生活者で亡くなった年の受給額が400万円以下の場合等は、準確定申告は不要です。ただし、不要の場合でも、多額に医療費がかかっていた場合等は、あえて準確定申告をすることで還付を受けられる可能性があります。
⑥遺産分割協議
上述したように、遺言書がない場合は、法定相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、遺産の分割内容を決めます。
遺産分割は、法律で割合や方法が決められている訳では無いので、基本的にはどのように分割しても、相続人全員が合意していれば特段、問題ありません。話し合いで決まった分割案に関して、遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名・押印を行います。
⑦相続税の申告・納付(相続開始~10ヶ月目)
⑥までの手順が完了した後は、相続税の申告書を提出します。提出先は、被相続人(亡くなった人)の住所を管轄する税務署です。
また、相続税が発生している場合には、申告と同時に税務署に納税手続きをしなければなりません。
相続税の申告・納付の期限は、相続が開始してから10ヶ月以内となっています。
もし10ヶ月以内の申告期限を経過してしまうと、加算税や延滞税といったペナルティが発生してしまうため、原則として期限までに確実に申告・納付を終わらせなければなりません。
不動産を相続した場合にかかる税金と費用
①不動産を相続した場合にかかる相続税
遺産を相続した場合に発生する相続税は、すべての相続財産の金額を算出した上で、総額に対して計算します。よって、不動産を相続した場合にも、個別の不動産に対してそれぞれ相続税が課される訳ではないので、すぐに相続税が計算できるわけではありません。
ここでは、不動産を相続した場合に発生する2つの費用について確認しておきましょう。
②登録免許税はかかるが不動産取得税はかからない
不動産を相続した場合には、法務局で名義変更の手続きを行う必要があります。名義変更を行う際には、登録免許税が課されます。
ちなみに、登録免許税の金額は「固定資産税評価額×0.4%」とされているため、例えば固定資産税評価額3,000万円の土地を相続した場合、12万円ということになります。
尚、通常、不動産を購入した場合や贈与により取得した場合には、名義変更の後に、不動産取得税が各都道府県から課されます。しかし、相続により不動産を取得した場合には、不動産取得税は課されません。
③相続登記を行う際に発生する司法書士報酬
相続登記は自分で行うことも出来ますが、不慣れな手続きである為、多くの方は司法書士に依頼することになると思います。
内容により金額の増減はありますが、一般的な住宅の相続登記の場合には6~10万円程度の価格帯のケースが多く見られます。