夫(または妻)が死亡した場合、妻(または夫)はひとり親として子どもを育てていくことになります。遺族年金や遺族補償がもらえない場合や、ひとり親の所得が少ない場合などは、ひとり親が子どもを育てていくことはとても大変です。そこで、ひとり親になった場合の公的な手当として、児童扶養手当があります。今回は、児童扶養手当について、詳しく解説します。
夫が死亡したとき妻には児童扶養手当が支給される?
夫が死亡して妻ひとりが子どもの親になったときは、そのひとり親に対して児童扶養手当が支給されます。また、妻が死亡したことでひとり親となった夫についても同様です。
児童扶養手当の対象となる児童は、18歳になってから最初の3月31日までの児童です。ただし、一定の障害がある児童の場合は、20歳になるまでが対象となります。
また、父または母と児童の両方ともが、日本国内に居住していることが条件となります。
なお、児童扶養手当を受給していたひとり親が再婚した場合は、受給資格を失いますので、児童扶養手当は支給されなくなります。
同じような公的な手当に児童手当がありますが、ひとり親は児童手当と児童扶養手当の両方を受給することができます。
一定の障害のある児童がいる場合は、特別児童扶養手当がありますが、ひとり親は特別児童扶養手当と児童扶養手当の両方を受給することができます(この場合は、児童扶養手当も20歳まで受け取ることができます)。
親が死亡したとき子供はいくら児童扶養手当を受給できる?
児童扶養手当の支給額は、ひとり親(以下受給者といいます)の前年の所得と、受給者と生計を同じくしている扶養義務者(児童の祖父母など)の前年の所得※の額に応じて決定されます。
※児童扶養手当における所得とは、収入から必要経費(給与所得控除など)を引き、養育費をもらっている場合は養育費の8割相当額を加算した額のことです。
なお、令和3年3月分より、非課税の公的年金についても所得の対象となります。
児童扶養手当の月額は以下の通りです(令和2年4月~)。
全額が支給される場合は43,160円、一部が支給される場合は43,150円~10,180円です。
児童一人の場合の月額に次の金額が加算されます。全額が支給される場合は10,190円、一部が支給される場合は10,180円~5,100円です。
児童二人の場合の月額に一人当たり次の金額が加算されます。全額が支給される場合は6,110円、一部が支給される場合は6,100円~3,060円です。
これらの金額は受給者と、受給者と生計を同じくしている扶養義務者の前年の所得に応じて変わります。
支給は、申請した月の翌月から開始されます。
支給月は、1月、3月、5月、7月、9月、11月の年6回に分けて行われます。支給月に、前月分と前々月分の2ヵ月分が受給者の口座に振り込まれます。
なお、児童扶養手当と同時に障害年金以外の公的年金(遺族年金、労災年金など)を受給しており、その額が児童扶養手当の額以上だった場合は、児童扶養手当は支給されません(全額支給停止となります)。
公的年金の額が、児童扶養手当の額未満だった場合は、児童扶養手当の額から公的年金の額を引いた差額分が支給されます。
障害年金については、令和3年3月分より、障害年金全体の額での計算ではなく子どもの加算部分についてのみを調整対象とすることになりました。子どもの加算部分についてのみを支給停止の対象とし、障害年金の本体部分については支給停止の対象とはなりません。
児童扶養手当の給付を受けるための申請手続き
児童扶養手当は、申請しなければ支給されませんので、申請手続きが必要です。申請手続きは、住所地がある市町村役場の窓口にて手続きをします。
手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 児童扶養手当認定請求書
- 請求者(受給者)とその児童の戸籍謄本または抄本
- 児童扶養手当を受給するための振込口座の通帳(またはキャッシュカード)
- 印鑑
- 所得がわかる書類
- マイナンバー
- 本人確認書類
などです。
なお、自治体や受給者の状況により必要な書類が異なったり、必要書類が追加されたりすることがありますので、事前に確認するとよいでしょう。
また、毎年8月には現況届の提出が必ず求められます。提出しない場合は支給停止になったり、2年間提出がない場合は時効により受給資格がなくなったりしますので注意が必要です。
多額の財産を相続すると児童扶養手当はもらえなくなるの?
相続された財産は所得には当たりませんので、児童扶養手当は支給されます。ただし、相続された不動産を売却した場合は譲渡所得となりますし、相続された不動産が賃貸不動産で、その賃貸不動産から収入を得た場合は不動産所得となります。
児童扶養手当に所得制限はあるの?
児童扶養手当には、受給者の前年の所得と、受給者と生計を同じくしている扶養義務者(児童の祖父母など)の前年の所得に対しての所得制限限度額があります。
扶養する児童の数が一人の場合、前年の所得の額が所得制限限度額87万円未満の場合は全額が支給されます。
前年の所得の額が所得制限限度額87万円以上230万円未満の場合は一部が支給されます。
前年の所得の額が所得制限限度額230万円以上の場合は、児童扶養手当は支給されません。
なお、所得制限限度額は、扶養する児童の数によって変わります。