アベノミクス以降、日本でも投資に関心が寄せられることとなりました。一時はバブル期以来の高値更新など、相場の盛り上がりがありました。
そんな中で、株式・公社債などの有価証券を相続することが以前より増えたように感じます。
本章では、上場株式を相続した場合の相続税について考えていきます。
上場株式の評価
上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式をいいます。上場株式には市場があることから、日々価格が変動します。そのため、いつ時点の評価額を使うかという問題があります。国税庁では、次の方法により評価するように定めています。
・相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日の最終価格(終値)
・贈与の場合は贈与により財産を取得した日の最終価格(終値)
ただし、上記の最終価格が次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
イ その月の毎日の最終価格の平均額
ロ その月の前月の毎日の最終価格の平均額
ハ その月の前々月の毎日の最終価格の平均額
市場がある以上、偶然その日の終値だけが高いことなども考えられます。課税の公平の観点から、当月の平均額、前月の平均額、前々月の平均額とも比較して最も有利な金額を選んでよいということになっています。
上場株式にかかる相続税
上場株式にかかる相続税
相続税は、次の算式により計算されます。
相続財産-相続債務および葬式費用=課税財産
(課税財産-基礎控除額)×相続税率=相続税額
※基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
●相続税の速算表
法定相続分に応ずる所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上場株式にかかる相続税について、事例で説明します。
(前提)
相続人は配偶者、子2人の計3人、
相続財産は自宅とその土地 評価額3,000万円、
ファーストリテイリング(ユニクロ)の株式1,000株のみ
相続債務及び相続費用は0円とします。
(計算方法)
①まずは基礎控除額を計算します。
基礎控除額=3,000万円+600万円×3人=4,800万円
このため、4,800万円を超える相続財産があるときに相続税が発生します。
②次に相続財産を計算します。
ファーストリテイリングを1,000株持っているので、次の4つの価格を調べます。
相続した日の終値 61,950円
相続した月の平均額 59,599円
相続した月の前月の平均額 61,602円
相続した月の前々月の平均額 60,614円
最も低い相続した月の平均額59,599円で評価します。
59,599円×1,000株=59,599,000円
自宅とその土地で30,000,000円あるので、
59,599,000円+30,000,000円=89,599,000円
③次に相続債務および葬式費用を計算します。
本事例では、0円としています。
④相続財産-相続債務及び葬式費用を計算します。
89,599,000円-0円=89,599,000円
⑤基礎控除額を控除して課税財産を計算します。
89,599,000円-基礎控除48,000,000円=41,599,000
⑥相続税の速算表に当てはめて計算します。
5,000万円以下の欄を見ると、税率20%、控除額200万円です。
よって相続税は、41,599,000円×20%-控除額200万円=6,319,800円
となります。
参考資料:国税庁タックスアンサー
No.4155 相続税の税率
No.4632 上場株式の評価