異母兄弟に対する相続について

相続が発生した際に、自身の知らないところで実は隠し子がいたという事例があります。そういった場合、そもそもで相続人としての対象となるのか、その際には割合はどうなるのでしょうか。

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異母兄弟とは?

異母兄弟とは、文字通り母親が異なる兄弟のことをいい、父親については同一人物となります。
また、異母兄弟に対し父親が異なる兄弟については、異父兄弟となり、母親が同一人物となります。異母兄弟または異父兄弟の場合でも基本的な考え方については同じものです。ここでいう「兄弟」については、婚姻関係の間にあった人との子どもだけではなく、婚姻関係にない人(愛人など)との子ども(非嫡出子)も異母兄弟または異父兄弟として対象となってきます。

異母兄弟の相続分

原則、異母兄弟であっても相続権は発生します。
相続分については民法900条4項で、「子、直系尊属または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と定められています。
条文の中に記載がある、「父母の一方のみ同じくする兄弟姉妹」という表現についてですが、一般的に「半血」の兄弟姉妹であるといわれます。
対して、「父母の双方を同じくする兄弟」については「全血」の兄弟姉妹といいます。

半血の兄弟か全血の兄弟かで、法定相続分が異なる事例があります。

<事例1 異母兄弟の共通の父親が亡くなった場合>
この場合、異母兄弟の相続分については同じ割合になります。被相続人の子として相続する場合には、半血と全血の兄弟間で法定相続分に違いはありません。

<事例2 相続人が被相続人と父母を共通する兄弟と異母兄弟の場合>
この場合、民法900条4項の条文通り半血の兄弟に対する相続分は、全血の兄弟の1/2となります。

異母兄弟の所在が不明な場合

異母兄弟が存在していることは認知していても所在が不明な場合があります。その場合、遺産分割協議が進まない事態が発生してしまいます。そうした事態に対して具体的にどのような対応が必要となってくるのでしょうか。

(1)所在不明時の捜索方法
一つ目の方法として住民票・戸籍の附表を取得することです。それぞれの資料で対象となる方の移動先の住所を確認することができます。
取得方法は各々により異なってはくるのですが、住民票であれば除票されてから5年以内の移動を確認することができ、戸籍の附表であれば、本籍地を移動するまでの住所を確認することができます。
二つ目に探偵等に調査依頼をすることです。費用は発生してしまいますが、迅速かつ確実に対象となる方を見つけ出すことができます。

(2)不在者財産管理人の選任
所在が不明な異母兄弟本人にかわって、財産を管理する者を選任するよう家庭裁判所に請求することができます。
実際に民法25条1項に定められています。

1 従来の住所または居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人または検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

遺産分割を実際に行う前でも、異母兄弟については他の相続人と共に、遺産を所有している共有持分という状態になるため、不在者財産管理人の選任を行うことは円滑に事を進める際に必要となってくる手続きだといえます。

(3)遺産分割協議を行う旨の許可を得る
不在者財産管理人の選任をすることで財産を管理する者を制定できても実際の権限は、管理・保存する行為のみとされています。そのため財産管理人が改めて家庭裁判所に対して遺産分割協議を行う旨の許可を得る必要があります。

上記の様に、異母兄弟に対しても相続権については発生します。ただし、被相続人との関係性により「全血」の兄弟姉妹よりも法定相続分の割合が同等もしくは1/2の割合になる場合があるので、人物相関図の整理が必要となってきます。
異母兄弟が不明なときに、遺産分割協議等の手続きが進まない場合があるので不在者財産管理人の選任や産分割協議を行う旨の許可を得ることなど後に影響が出ないよう臨機応変に対応していくことも必要であるといえます。

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