相続人に寄与分が認められる場合はどんなケース?

相続の際には法定相続の相続分の基本的な決まりがある以外にも、遺産分割協議において額を調整することができます。その中で亡くなった人に対して便宜を図ったり貢献したことによって財産の取り分を増やす「寄与分」という制度があります。今回はこの「寄与分」について解説します。

目次

「寄与分」とは

寄与分とは、財産を残して亡くなった被相続人が生きている最中に被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人に対して特別な処遇を行うものです。

例えば長男と次男がいて、事業を行っている親が存命中に長男は親の事業を手伝い、親の資産形成に貢献していた場合、長男は次男に対して親が亡くなった際の遺産分割の際に寄与分として主張することができます。

寄与分の条件

寄与分が認められる大前提として、寄与分を主張する人が法定相続人である必要があります。たとえ近しい友人や被相続人の兄弟が財産形成に貢献したとしても、その人が遺産の一部をもらうようなことはできません。そして寄与分として認められる貢献は以下の場合でないといけません。

① 被相続人の財産維持・増加へ貢献

具体例)

  • 親の事業を手伝い、新規事業を展開し売上を大きく伸ばした。
  • 会社の規模を拡大するような業績を上げた。
② 被相続人の事業に対する財産上の給付

具体例)

  • 会社設立の際の発起人として多額の出資をした。
  • 経営難の際には金銭的な補助を行った。
③ 被相続人の療養看護

具体例)

  • 寝たきりの親をつきっきりで介護を行い、亡くなるまで10年間介護を行った。

特別の寄与の制度

2019年の法改正により、相続人以外の被相続人の親族が被相続人を無償で介護・療養等を行った場合には他の相続人に対して寄与分を請求することができる「特別の寄与の制度」が創設されています。

寄与分の主張と遺産分割

寄与分がある際にはその証拠を整え、遺産分割協議において寄与分の主張を他の相続人に主張します。他の相続人全員に異議申し立てがない場合には寄与分を相続財産から引き、残った分を法定相続分や指定相続分に応じて分配します。

例えば5,000万円の相続財産を長男と次男で分けるとします。長男が1,000万円分の寄与分があると主張し、次男がそれに応じたとします。そうすると5,000万円から1,000万円を除いた4,000万円を法定相続分で長男・次男がそれぞれ2,000万円を受け取り、1,000万円の寄与分を長男が受け取ります。最終的な取り分として長男が3,000万円、次男が2,000万円を受け取ります。

もし寄与分の主張に他の相続人の中から異議申し立てがあった場合には家庭裁判所において調停や審判を行って、寄与分の時期や額を決定します。

まとめ

  1. 寄与分とは財産を遺して亡くなった被相続人に対して財産の維持・増加に貢献した相続人が、その貢献内容に応じて財産の取り分を多くもらえるようにする制度のことです。
  2. 寄与分を主張することができる対象の人は法定相続人で、近しい友人や被相続人の兄弟姉妹は主張することができない。
  3. 寄与分がある際には、実際に行った証拠等を整理し、遺産分割協議の際に他の相続人に対して主張する。
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