公証役場の遺言検索システムの活用方法

目次

全国の公証役場の遺言検索システムで公正証書遺言の有無を確認可能

相続において「遺言書」があるかどうかは、非常に重要な問題です。
その「遺言書」によっては、その後の相続の手続きが、大きく変わってくることになるからです。
生前に相続の遺言書について、事前に聞いておければ、遺言書の有無について問題がないのですが、あまりにも触れにくい問題であるため、残された遺族にとっても、亡くなった後から必死になって「遺言書」を探すというケースもまれではありません。

また、「遺言書」について、事前に聞く前に急に遺言者が亡くなってしまったということもあるでしょう。
まさか、とは思っていても、思いもよらぬかたちで「遺言書」が見つかることもあります。
相続の手続きの流れとして、まず「遺言書」を探すところから始めることが肝心です。
では、「遺言書」の有無は、どのようにして確認できるのでしょうか。

自筆証書遺言は故人が隠していそうな場所を探す

「自筆証書遺言」の場合は、故人が保管している可能性が高い場所を、探す方法しかありません。
可能性として「書斎の鍵付きの引き出し」や、「本棚」や「お気に入りの本の中」などを徹底的に探していくことになります。
自宅を探しても「証書」が見つからない場合は、メイン銀行や信託銀行、故人と付き合いのあった知人や友人、もしくは専門家などに預けていないかを確認しておきましょう。

なお、【2020年7月以降】は、法務局においても「自筆証書遺言」を預けられるようになりました。
いずれにしても「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」については、可能性の高い場所や、銀行等の貸金庫を必死に探すしかないのです。
それに対して「公正証書遺言」の場合は、遺言検索システムという、とても便利な方法で「遺言書」の存在を調べることができます。

遺言検索システムで、公正証書遺言はデータベース化されている

「遺言検索システム」とは、日本公証人連合会によって作成されたシステムであり、1989年(平成元年)以降に作成された「公正証書遺言」がデータベース化され、管理されています。
公証人は1989年1月1日以降に作成された、すべての「公正証書遺言」に関する情報を報告しています。

日本公証人連合会が、それらの遺言書情報をデータベース化され、管理しています。
その遺言書情報には①遺言書の作成年月日、②証書番号、③遺言書の氏名、④生年月日、⑤作成公証人名と⑥電話番号が含まれます。
どこの公証役場からでも、この遺言検索システムを利用して日本全国各地で作成された「公正証書遺言」を検索することができるのです。
「遺言書」があることがわかれば、遺言書を保管している公証役場に請求して謄本を発行してもらえます。郵送により受取ることも可能です。

このようにして、「遺言書」の存在を知らないまま、相続の手続きを進めてしまい、あとから面倒な事態に陥ることを防ぐことができるわけです。
この遺言検索システムの利用は、全国各地どの公証役場でも行えます。

公正証書遺言の有無は、全国約300ヶ所ある公証役場で確認

ここでは、簡単に「公証役場」について説明しておきます。
通常の生活をしていると、普段聞きなれないかもしれませんが、「公証役場」とは、国内に約300ヶ所ある法務局管轄の公的機関になります。
必ず、常時1名以上の公証人が配置されています。
公証人とは、裁判官、検察官、法務局長など原則として30年以上の実務経験がある法主に「公正証書の作成」または「私文書の証明」および「証書」が作成された日付の証明等を行っています。

遺言検索システムの照会ができるのは「公証人」だけなので、公証役場へ出向いて照会を依頼するわけです。
既に述べた通り、検索システムの利用は「遺言者」が公正証書遺言を作成した公証役場に限られるわけではなく、全国各地の公証役場で利用することができます。
最寄りの公証役場でお尋ねください。
公証役場の所在地と連絡先につきまして、
下記の「公証役場一覧」(日本公証人連合会)にてお調べすることができます。

参考:「公証役場一覧」(日本公証人連合会)

• システムを利用できるのは「相続人」と「利害関係者」だけ

この検索システムの利用請求ができるのは、下記の者に限られます

• 法定相続人
• 相続人以外の利害関係者(相続人の受遺者や、財産管理人など)

なお検索ができるのは、遺言者が亡くなったあとになります。
亡くなる前は、遺言者本人しか利用することができません。
推定相続人(法定相続人)であっても、利用することはできません。
検索自体は無料になります。

検索にかかる時間は、「書類の確認」や「照会手続き」等を含めて、
20~30分ほどになります。
「遺言書」の存在に気が付いたら、謄本を請求しましょう。
謄本の手数料はページ1枚250円、閲覧は1回200円です。
謄本の請求に必要な書類は、下記の検索時に必要な書類と同じです。
原本が、訪れたところとは別の公証役場に保管されている場合、郵送で謄本の請求や受領をすることができます。
「公証役場」の担当者に、相続の手続きと手続きに関する費用を確認しましょう。

公正証書遺言の確認に必要な書類

公証役場に出向く際には、二度手間にならないように、必要な書類を忘れずに持参するように気を付けてください。
プライバシーを守るためにも、公証人は相続人や利害関係者以外の者には、絶対に公正証書遺言の照会依頼には、応じません。
遺言書の存在の有無も含め、何の対応もしてくれません。
下記の書類は、公正証書遺言の確認に必要な書類ですので、よく確認してから出向くようにしましょう。

【相続人の本人が公証役場へ行く場合】

 1.被相続人の戸籍(除籍)謄本
遺言者が亡くなっていて遺言書の照会と検索が利用できることを証明するために、必要な書類です。もしくは、死亡診断書でも可能です。
2.相続人の戸籍謄本
システム検索を請求する人と遺言者の関係を証明するために、必要な書類です。
遺言者の相続人であることを、確認するために必要な書類です。
3.システム検索の請求者の印鑑証明書(3か月以内)と実印
システム検索を請求する人の本人確認資料です。
顔写真付き身分証明書(運転免許証等・マイナンバーカード)と認印が必要な書類です。

【相続人の代理人が公証役場へ行く場合】
相続人ではない親族や司法書士もしくは会計士などが、相続人の代理を受けて、公証役場に行く場合です。
上記の1~3に加えて下記の書類が必要になります。
なお、相続人の実印は持参しないで、下記の委任状に押印していきます。

• 相続人から代理人への委任状
遺言検索システムを代理したことの証明になります。
相続人の実印を押印します。

• 相続人の代理人の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード等)と認印

【代襲相続人が公証役場へ行く場合】
相続人が死亡していて代襲相続人(相続人の子供)が公証役場に行く場
合です。
上記1と3に加えて下記の書類が、必要になります。

• 相続の代襲相続人であることを証明する戸籍謄本

【受遺者が公証役場へ行く場合】
相続人ではない方が、相続の受遺者(遺贈を受ける人)になっていると考えて公証役場に行く場合です。
上記1と3に加えて下記の書類が、必要になります。

• 受遺者であることが想定できる資料及び説明
相続人ではない方が、利害関係者であることを証明する必要があります。

• 相続の受遺者が親族の場合は、戸籍謄本等

【相続財産管理人が公証役場へ行く場合】
上記1と3に加えて下記の書類が、必要になります。

• 相続の財産管理人であることを明らかにする家庭裁判所の決定

【遺言書を見つけても自分では、開封してはいけない】
公正証書遺言書ではなく、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」を見つけた場合は、絶対に自分で開封してはいけません。
なぜなら自分で開封をしてしまうと、内容を書き換えたり、遺言書を破棄したりする可能性があるからです。
「遺言書」は相続の手続きにおいて、重要な書類となるため、絶対に手を加えないようにルールが決められています。

【自筆証書遺言・秘密証書遺言を見つけても開封をせずに、家庭裁判所で検認】
遺言書の検認とは、家庭裁判所に相続人が集まって内容を確認して、遺言書の内容を明確にする手続きです。
遺言書の検認することで、遺言書の内容・確認日時が明確になるため、遺言書を不正に改ざんしたり、遺言書を破棄したりできなくなります。

自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、遺言書の検認をしておかないと、その後の手続きにおいて遺言書を利用できなくなります。
公正証書遺言・法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言書は、遺言書の検認は必要ありません。

目次