遺贈とは

遺贈とは、遺言によって他人に財産を与えることです。生前における財産処分の自由を死後にまで及ぼすもので、相続人以外の人にも遺産を与えることができます。

目次

遺贈の種類

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の二つがあります。いずれの遺贈も負担付にしたり、停止条件付にしたりすることができます。

(1)包括遺贈
包括遺贈とは、遺産の全部または一部につき何分の一というような一定割合を示してなされる遺贈です。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することになります。ただし、包括受遺者が相続人でなければ、次の規定は適用されません。

<適用されない規定>
・基礎控除の計算上加算される相続人数
・生命保険金等及び退職手当金等に係る非課税金額
・相次相続控除

また、受遺者が遺贈者の一親等の親族及び配偶者以外の者であれば、相続税の二割加算の対象となります。

(2)特定遺贈
特定遺贈とは、特定の具体的な財産的利益によりなされる遺贈です。
特定遺贈には、特定物遺贈と不特定物遺贈に分けられます。特定物遺贈の場合には、遺言の効力の発生のときに目的物の所有権が受遺者に移ります。

(民法964条 包括遺贈及び特定遺贈)
遺言者は、包括または特定の名義で、その財産の全部または一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

<受遺者と遺贈義務者>
受遺者:遺贈によって利益を受ける者…遺贈の効力発生のときに生存している必要がある。
遺贈義務者:遺贈を実行すべき義務を有している者…原則として相続人、遺言があれば遺言執行者が遺贈義務者となる。

遺贈の承認・放棄

包括遺贈は相続と同様に扱われます。そのため、放棄する場合には包括遺贈のあったことを知った時から3か月以内に放棄の旨を家庭裁判所に申述する必要があります。
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます。遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生ずることとなります。
また、遺贈を放棄した場合には、撤回することはできません。

(民法986 遺贈の放棄)
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(民法989 遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)
遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
2第919条第2項及び第3項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。

遺贈の無効・取消し

遺贈は遺言で実行されるため、遺言に無効の原因があれば遺贈も無効となります。また、遺言は法律行為となるため、法律行為の無効・取消原因があった場合にも無効等になります。

<遺言に特有の無効原因>
・遺言能力の欠如
・所定の方式の欠如

<遺贈に特有の無効原因>
・遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合
・停止条件付の遺贈について受遺者が条件の成就前に死亡した場合
・遺贈の目的となっている権利が遺言者の死亡の時に相続財産に属していない場合

(民法994条 受遺者の死亡による遺贈の失効)
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(民法996条 相続財産に属しない権利の遺贈)
遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められるときは、この限りでない。

<ポイント>
・遺言によって他人に財産を与えることです
・相続人以外の人にも遺産を与えることができる
・遺贈は放棄することができる

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