秘密証書遺言とは?

遺言者が作成することができる遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれの遺言にはメリット・デメリットがありますが、こちらでは秘密証書遺言について説明とメリット・デメリットの説明を行っていきます。

目次

遺言とは?

秘密証書遺言の説明の前に、まず遺言についてご説明します。遺言には、

① 自筆証書遺言② 公正証書遺言③ 秘密証書遺言

の3種類があります。
それぞれの特徴について説明していきます。

①自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら遺言の内容の全文を手書きし、かつ、日付及び氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成します。

なお、平成31年1月からは、民法の改正により、パソコン等で作成した財産目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を財産目録として添付することが認められるようになりました(民法968条)。この場合、これらの財産目録には、遺言者が毎葉(自書によらない記載が両面にあるときは、その両面)に署名し、押印しなければなりません。

このように、添付する財産目録については、自署でなくてもよくなったのですが、財産目録以外の全文(例えば、財産目録記載のどの財産を誰に相続させ、又は遺贈するという記載を含みます。)は、遺言者が自書しなければなりません。これをパソコン等により記載したり、第三者に記載してもらったりした場合には、遺言が無効になります。

なお、自筆証書遺言の保管方法として、遺言者が自ら保管するほか、法務省令で定める様式に従って作成した無封の自筆証書遺言であれば、遺言書保管制度を利用して法務局で保管してもらうこともできます。

②公正証書遺言
 公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。

なお、民法では、「証人二人以上」と定められていますが、公証実務では、証人が3名以上になることはなく、証人2名で公正証書遺言が作成されます。
遺言者が遺言をする際には、どのような内容の遺言にしようかと思い悩むことも少なくないと思いますが、そのようなときも、公証人が、親身になって相談を受け、必要な助言をし、遺言者にとって、その意向に沿った最善と思われる遺言書を作成していくことになります。

③秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をし、これを封筒に入れて、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印をした上、公証人及び証人2名の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申し述べ、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2名とともにその封紙に署名押印をすることにより、作成します。なお、民法では、「証人二人以上」と定められていますが、公証実務では、証人が3名以上になることはなく、証人2名で秘密証書遺言が作成されています。

以上の手続を経由することにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず、秘密にすることができます。
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、遺言書は、パソコン等を用いて文章を作成しても、第三者が筆記したものでも、差し支えありません。

3種類の遺言についてまとめると、下表のとおりです。

遺言書方式の比較

区分 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成場所 どこでもよい 公証役場 公証役場
証人 不要 2人以上

公証人1人及び証人2人以上

作成者 本人 公証人 本人(代筆可)
署名捺印 本人 本人、公証人、証人 必用
家庭裁判所の検認 必用 不要 必用
メリット ●1人で作成できる
●費用がかからない
●遺言の存在と内容を秘密にできる
●公証人が作成するので方式不備にならない
●公証役場で保管するので、紛失等の恐れがない
●遺言の内容を秘密にできる
デメリット ●方式、内容不備で無効となる可能性がある
●遺言書が発見されない可能性がある
●作成に手間と費用がかかる ●方式、内容不備で無効となる可能性がある
●作成に手間と費用がかかる

秘密証書遺言の作成方法

秘密証書遺言は、以下の4つの手順で作成されます

① 遺言の内容を記入する
遺言者の自筆での署名及び押印(認印可)がされていれば、ほかの内容に関しては手書きでもワープロ書きでも認められています。

② 遺言書を封筒に入れて封印する
遺言書に押印した印鑑と同様の印鑑で封印をします。別の印鑑だと無効となってしまいます。

③ 証人と一緒に遺言書を公証役場に持っていく
上記で作成した遺言書を、公証役場に持っていき、証人2名と公証人の前で作成した遺言書を提出します。

④ 遺言者の申述と封紙への署名押印
自己の遺言書である旨と自己の氏名と住所を申述します。その後に公証人がその封紙上に日付及び遺言者の申述を記載し、遺言者と証人2名とともにその封紙に署名押印をします。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

① 秘密証書遺言のメリット

遺言書が存在することを証明できる
秘密証書遺言のメリットは、公証人と証人にその存在は証明しているので、いざ相続となったときにその遺言書の存在があることが忘れられるということがありません。
遺言内容を秘密にできる
また、遺言書の内容を自己以外に知ることが出来ないので相続の時点までその内容を秘密にできることです。

② 秘密証書遺言のデメリット

記載内容次第で無効となるリスク
秘密証書遺言のデメリットとしては、その遺言書の内容は秘密にされているため記載内容に不備があった場合は無効とされてしまう危険性があることです。
自己保管による紛失のリスク
また、作成した記録自体は公証役場に残ることになりますが、その遺言書の保管は自己で行わなければなりません。そのため紛失のおそれもあります。

③ 遺言種類の再考も選択肢
上記のように秘密証書遺言のデメリットは影響が大きなものです。より確実に財産を遺言書によって相続させたいという場合は、秘密証書遺言ではなく公正証書遺言を作成することをおすすめします。また、公正証書遺言では公証人と証人に遺言内容が分かってしまうため、あくまで遺言内容を秘密にしておきたい場合には、法務局での自筆証書遺言書保管制度を利用するのも良いでしょう。自己保管による紛失のリスクが回避できます。

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