現金を多く保有しており、相続税を減らそうと考えた際は、現金ではなく他の資産に変えることで相続税評価額を減らすことができます。
不動産の実勢価格と相続税評価額に大きな差があるため、不動産を購入することが効果的です。
賃貸用不動産が相続税の節税になる理由
相続税節税のためには下記いずれか2点が必要になります。
① 相続財産を減らす
② 相続財産評価額を減らす
現状、相続財産を減らすためには存命中に子や孫に贈与(生前贈与)を行ったり、生活費として現金を使用したりと、選択できる行動が限られてしまっています。
また、現金を使用して相続税額を減らすことができても、相続税納付用の財産が枯渇してしまったり贈与税が発生してしまったりする可能性もあるため、効果はあまり期待できません。
よって、①の「相続財産を減らす」ことに尽力するよりも②の「相続財産評価額を減らす」ことを優先した方が効果的です。
そこで不動産購入の選択肢が出てきます。
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額に準拠し、新築居住用建物の固定資産税評価額は、建築価格の50%~70%程度になります。
また、土地については路線価や倍率方式に基づき評価額を算出しますが、一般的には時価の80%程度となる場合が多いです。
よって、現金で保有して100%の評価となるよりも、現金を「建物」や「土地」に変換した方が評価額を減らすことができるため、相続税節税の効果が出てきます。
また、居住用ではなく賃貸用建物の場合、借りている人がその建物を使用していると見なされ、貸している人は物件所有者の権利の一部分が制限されます。
上記のような物件を借りている人の権利を「借家権」と言い、相続税評価額算出時には借りている人に借家権割合が3割あることとし、貸している人は残りの7割の額で物件評価をされるため、更なる節税効果が期待できます。
建物の全てを貸している場合、3割も相続税評価額が下がることになるうえ、家賃収入も得ることができます。
賃貸不動産の相続税評価額の計算例
ここでは具体的に土地を含めて賃貸物件を購入した際の相続税評価額について考えてみたいと思います。
1億円でアパート(建物7,000万円、土地3,000万円)を購入したケースを考えていきます。
①建 物
居住用建物の固定資産税評価額は、建築価格の50%~70%程度が目安となります。ここでは50%と仮定して計算をしていきます。
建物の固定資産税評価額:7,000万円×50%=3,500万円
全て満室で空室がない状態を仮定すると、借家権割合3割を差し引くことができるので、3,500万円×(100%-30%)=2,450万円
②土 地
土地の相続税評価額は、購入価格の約80%が目安となります。
3,000万円×80%=2,400万円
物件を貸し出すと、土地評価は「貸家建付地」として下記の式の括弧内の割合を控除できます。
貸家建付地の価額=自用地の価額-(自用地の価額×借地権割合×
借家権割合×賃貸割合)
そのため、借地権割合70%の地域であった場合、
2,400万円-(2,400万円×70%×30%×100%)=1,896万円
③評価額合計
建物と土地の相続税評価額合計は、2,450万円+1,896万円=4,346万円となります。
現金のまま持っていれば額面1億円のままだったのですが、賃貸アパートを購入し、貸し出しを行ったことにより、相続税評価額が4,346万円となり、5,654万円も相続財産評価を減らすことができました。
また、一定の条件で「小規模住宅用地」として相続税がさらに減額されることもあります。
まとめ
上記でご覧になったように、「現金」の姿を変えてあげるとお金の評価が変わり、相続時の節税につながることがあります。
中でも、簡単な例ではありましたが上記のように賃貸用不動産にすることで節税効果がより顕著に表れることがあります。
状況によって色々なケースがありますので、手法や判断についてより詳細に知りたい方は専門の方に問い合わせてみてください。