公正証書遺言が無効になるケース

公正証書遺言は遺言書なかで最も適法で確実なものとされていますが、無効になることあります。法律の専門家が作成するので形式の誤りなどはほぼないと考えられますが、たとえば、以下の事例の場合、無効にすることが可能となります。

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公正証書遺言が無効になる事例

遺言能力がなかった場合

「遺言能力」とは、遺言がどのような意味を持ち、また、どのような効力があるかを理解している能力をいいます。したがって、遺言書作成当時、遺言者が認知症・精神障害と診断され、判断能力がなかったと証明されると無効にすることができます。

確認方法
  • 作成当時の病院の診療録や看護記録を確認する
  • 当時の医師に確認する

口授を欠いていた場合

「口授」とは、遺言者が口頭で遺言内容を公証人に伝えることです。

公正証書遺言を作成する際、法律上は、まず、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がその内容を用紙に書き記します。そのうえで、確認のために、公証人が作成内容を遺言者の前で読み上げて確認し、「以上で問題ありませんか?」と確認します。

しかし、近年は遺言者が事前に、内容について公証人と話し合いをしたり、第三者が代弁したりして、内容を詰めておくことが多くなっています。 そのため、作成当日は時間を短縮しより多くの面談をする方針もあり、公証人が記載内容を読み上げ、問題がないかどうか遺言者に確認する程度で終わることが多くなってきています。実際は、事前に、第三者が主導して遺言内容を決めていたとしても、当日、たとえ遺言者が遺言内容を理解していない場合ても、返事さえできれば、遺言書を作成できてしまうのです。

確認方法
  • 作成当時の病院の診療録や看護記録を確認する
  • 当時の公証人・証人に確認

証人が不適格だった場合

公正証書遺言を作成する際には、2人以上の証人が必要になりますが、条件によって、証人になれない人がいます、以下の人が証人となっていた場合、無効にすることができます。

  • 未成年者
  • 推定相続人やその家族
  • 財産を譲り受ける人とその家族
  • 公証人の家族や4親等以内の親族
  • 公証役場の職員又は公証人に雇われた人

真意と内容に錯誤があった場合

遺言者が意図していたことと作成した遺言内容に違いがある場合、遺言内容は無効になります。 「錯誤」には、「勘違い」だと思われることが含まれます

表示上の錯誤は書き間違いや言い間違い
表示行為の意味に関する錯誤は考え自体が勘違いである
動機の錯誤はその考えに到るまでのきっかけに勘違いがある

確認方法
  • 裁判所に申し立てする

公序良俗に違反していた場合

公の秩序に反する場合も無効になります。 公序良俗違反とは、社会的、道徳的に認められない場合がこれにあたります。

具体的には、以下のような場合が当てはまります。

  • 戸籍上の妻子がいるのにかかわらず、愛人に全財産を相続させる。
  • 経営者が第三者に会社の全財産を相続させる。
確認方法

裁判所に申し立てする

遺言書が無効ではないかと感じた際の対処法について

  1. 遺言書が無効ではないかと思ったら、まずは、他の相続人の意見を確認して下さい。 他の相続人の全員が同じように思っている場合は、裁判などを介さなくても、遺言書を無効として、他の相続人と遺産の分け方を協議します。
  2. 他の相続人と意見が対立し、話し合っても結論が出ない場合、裁判所での手続となります。まず、調停の相手とする相続人の住所地の家庭裁判所に家事調停を申し立てます。
    調停委員に関与してもらいながら、解決を目指します。
    調停委員会は裁判官1名と調停委員2名で構成され、各当事者から事情や意見を聴取し、それが有効か無効かの助言を与えてくれます。 話し合いの結果、全員が納得すれば、無効することができます。
  3. それでも同意が得られない場合は、最後の手段として訴訟を起こすことになります。

申立先は家庭裁判所のWEBサイトで探すことができます。

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